岩手町SDGs未来都市共創プロジェクト

岩手町SDGs未来都市
共創プロジェクト

佐々木町長が行く!

 

 

SDGs未来都市同士が  それぞれの思いや取り組みについて理解し、ともに持続可能な未来をつくっていくことを目指す『町長対談企画』がはじまりました!

 

第一弾の大崎町との対談に続き、第二弾では「SDGsと言えば」というくらい、SDGsの取り組みで一躍有名となった 北海道下川町の谷町長と、岩手町の佐々木町長の対談をお届けします。

 

森林環境教育やバイオマスの熱利用、木材のカスケード利用など、林業の取り組みも先進をいく下川町。それだけでなく、SDGsの取り入れ方や進め方にも学ぶところがたくさんあります。

 

今回は、それぞれのSDGsの取り組み方や、そこにある哲学や思い、特に注力する取り組みなどについて語っていただきました。

  

【プロフィール】

下川町長 谷 一之(2期目)

1955年1月19日下川町生まれ。NPO法人北海道遺産協議会 理事やNPO法人カルチャーナイト北海道 理事、国立研究開発法人  森林総合研究所  評議員など歴任。町長になるまでの26年間、北海道の地域づくりアドバイザーを担当。アイスキャンドルでイベントを仕掛け、今では道内150カ所で開催されるまでに発展。1999年株式会社 谷組 代表取締役社長。1995年に下川町議会議員に当選後、2011年に下川町議会議長を務め、2015年5月から現在まで下川町長を務める。

 

岩手町長 佐々木 光司(1期目)

2018年6月〜現在。1959年8月2日、岩手町沼宮内生まれ。1983年4月 岩手町役場採用。2017年3月岩手町役場を退職し、社会起業大学でソーシャルビジネスを学ぶ。2018年6月岩手町長に就任。岩手町の先人が築き上げてきた「農業」「スポーツ」「アート」という3つの特徴的な文化的要素に着目。変化が激しい時代、そして人口減少、少子化が深刻化する中で、岩手町ならではの持続可能なまちづくりを目指す。

 

 

■ なぜ SDGsに取り組むのか?  まちづくりに対する思い

 

谷町長:

下川町の歴史は120年くらいしかありませんが、古い時代を担ってきたのが私の先祖で、私で5代目となります。もともとは山から木を切って運ぶ、造材業の商売をやっていて、土木や建築などに変わりながら商売を引き継いできました。

 

その仕事に就いた後は、青年活動や商工会でまちづくりにどっぷり入ることになったのですが、イベント開催を中心に活動してきて、28歳くらいから自分の町の活動だけでいいのだろうかと思い、北海道を4つの地域に分けて、北北海道エリアでグランドデザインをつくり、50の町に星座名をつける「北の星座共和国」を始めたんですね。

 

ここで「点から線へ、線から面へ」「ヒューマンネットワーク」「グランドデザイン」「ビジネスチャンス」4つのコンセプトを持って、広域展開を打ち出したんです。30代のときに議会議員に声がかかったんですが、もっと地域振興をやりたいと断って、60歳になるまで北海道地域づくりアドバイザーとして、地域振興で北海道中を飛び回りました。

 

ここでの経験から、定義や意義、必要性を自分のなかでつくり上げ、3つのコンセプト「人材育成」「広域連携」「通年型ビジネス」を持って、現在まちづくりに取り組んでいます。

 

谷町長

 

 

佐々木町長:

 私は東京の大学を出てすぐ地元に帰って、役場に就職しました。谷町長と同じように、私も20〜30代は青年活動でイベントをやったりと、役場とは違う活動にも参加してきました。

 

岩手町は石の産地でありまして、うちは家業で石材業をやっています。職人に囲まれてビジネスのなかで育った人間ですから、役場に就職して非常に違和感を感じたんです。今年で62歳になるんですけれど、58歳になるときに役場の職員を早期退職したんですね。

 

岩手町は人口減少と経済縮小で、私たちは泥舟に乗っているのではないか、岩手町で商売をやっても上手くいかないと思われてしまうのではないか、このような危機感を持って、東京のビジネススクールに飛び込んでいきました。

 

そこでSDGsに出会って、これだ!と思い、今は暗中模索しながら手探りで取り組んでいます。谷町長のお話から ”谷イズム” のようなものを感じて、私自身も持たないといけないなと思ったところです。

 

佐々木町長

 

 

谷町長:

ありがとうございます。下川町のSDGsの取り組みの背景には、さまざまなことがありました。2008年に国が環境モデル都市を募集して、温室効果ガスをいかに削減していくためにモデルをつくろうということで、北海道では下川町と帯広市が選定を受けました。

 

その後、政権が自民党から民主党に変わり、環境未来都市の公募が行われました。北海道では下川町のみが選定されたかたちです。

 

環境未来都市の取り組みのなかで、SDGsの前身となる「環境」「社会」「経済」3つの領域で統合的に問題解決していけるかに取り組んできました。もともと下川町は、町面積の9割以上を森林資源が占めていますので、20世紀後半から森林を基盤としたエネルギー政策と環境政策に力を入れています。

 

出典/下川町ありたい姿

 

 

谷町長:

2015年にSDGsが国連で採択されて、第6期総合計画の策定にSDGsを取り入れることとし、以前から総合計画の委員に3つの部会を設置しているのですが、そのなかで計20名でSDGs未来都市部会を設置し、中堅職員10名と町民が一緒に議論してきました。

 

この取り組みのなかで、17ゴールとは別に下川町の将来目標である『2030年における下川町のありたい姿』をつくっていこうということになり、住民のみなさんにもご提言いただき、下川町のありたい姿の7つの目標につながったということです。

 

行政も民間企業もそうですし、コミュニティを預かる町内会のリーダーも、中長期の目標を持って取り組んでいくことは必要になってきます。全部は難しいかもしれませんが、リーダーはしっかりとした全体ビジョンを持って、事業政策や企画の立案をしていくのが大事だと思っています。

 

佐々木町長:

下川町の部会のお取り組みは、大変参考になります。岩手町は、令和2年7月からSDGsの取り組みをスタートしました。岩手町の新しい総合計画にも、SDGsをしっかり盛り込んでいます。

 

ここには3つのポイントがございまして、1つは「シビックプライド」、住んでいる人だけではなく訪れる人、移住してくる人、みんなで郷土愛や地域への愛着を共有して盛り上げていくこと、2つ目は選ばれる町になるよう「ブランディング」していくこと、3つ目には「SDGsを推進」していくこととしています。

 

出典/岩手町総合計画

 

 

谷町長:

私も次世代の人たちにどのようによりよい形でつなげていくかが非常に大事だと思っています。下川のオリジナル目標でも、7番目の「子どもたちの笑顔と未来世代の幸せを育むまち」を特に取り組んでいこうという共通認識でやっています。

 

ここでは未来の学びコーディネーターとして人材を誘致しまして、地域のさまざまな方とともに「地域共育ビジョン」を策定し、小中高と授業や社会活動に参加していただいて、SDGsや社会活動がいかに大事かを伝えることや、さまざまな知識を取り入れてもらうことをやっていただいています。小中学校ではコーディネーター用に席を設けました。

 

また、幼児から高校生まで15年にわたって森林環境教育を行っています。数十年続けてきた取り組みで、町も毎年500万円計上して、学校の先生や地域住民が講師となって子どもたちに指導しています。これによって郷土愛、下川町を離れていっても故郷を思う気持ちが育めて、Uターンで戻ってくることにもつながるのだと考えています。

 

ビジョンの普及のための塗り絵大会

 

 

■ 「地域ならではの言葉」と「ステークホルダー」でSDGsを広める

 

佐々木町長:

SDGsを共通認識として持つという点で、岩手町内での理解がまだまだ低いことが課題としてあるのですが、何か工夫されていることはありますか?

 

谷町長:

SDGsは横文字で町民のみなさんが理解しづらいということがあるので、私が考えた地球規模では「世界の(S)」「誰もが(D)」「元気で(G)」「幸せになる(s)」、下川町では「下川の誰もが(SD)」というふうに、身近に感じてもらえるようにSDGsを言い換えるなど工夫して伝えています。

 

広報誌などで常に露出度を高めて、SDGsの意味や意義、理念は何かを広げていくこと、小中学の授業に職員を派遣して、SDGsの話をしてもらう、小さいときから触れてもらうことが重要だと思っています。

 

出典/下川町

 

地域資源としての自然資源、生産資源、文化資源、これはどの町にも潜在的にあるんですね。下川町は人口が3,200人なので、人・もの・金・情報・技術・ノウハウ・システムといった経営資源に乏しいところがあります。

 

地域資源を生かすために、この経営資源をいかに高めていくか。そのときに、内側の力だけではなくて、外側の力がどうしても必要になってきます。そこでどういう企業や機関、自治体とパートナーシップを組むことが地域資源を生かすことにつながるのか、探求しています。

 

最近の取り組みでは、吉本興業とも連携協定を結んで、SDGsを広めようと映画や新喜劇(下川町では森喜劇)や商品のPRとさまざまなことでエンタメ力をお借りしています。

 

外から来ている人は、こだわり過ぎていないし新しい発想を持っている上に、血縁のしがらみがないので、新しい企画ができる可能性を持っています。そういう人たちがリーダーとして、どの町にも誕生していくのが必要なのではと思っています。

 

出典/プロジェクト下川町株式会社

 

 

■ 「その気にさせるイベント」で連携のために敷居を下げる

 

谷町長:

自治のなかではコミュニティ活動、公民館活動が一番大事だと思います。行政はそこの補完機能だと思っていますので、そこを次世代につないでいきたいですね。まちづくりには3つの要素がありまして、「その気にさせる」「あきらめない」「自分のスタンスをつくる」。これを理念とし活動を進めていきたいと思っています。

 

SDGsを取り込むことで自分にどうメリットがあるのか、ここを理解することが好影響を与えたり、好奇心を育んだりということにつながっていくのではと思いますので、そこをくすぐるところ、その気にさせるところは、下川町でも悩みながらやっています。

 

 

佐々木町長:

「その気にさせる」というのが、谷町長ならではの言葉ですね。

 

谷町長:

この「その気にさせる」がないと、敷居を下げてフラットに出来ないと思っているんですね。行政も町民もお互いに敷居が高いと思っていますし、3,200人の町でも縦割りになってしまっていて、これに横軸を刺していくには、SDGsを接着剤にしてつないでいくことが大事だと思っています。

 

SDGs未来都市部会のようす

出典/下川町

 

 

■ 「ステークホルダー」と「指標」でプロジェクトの進捗管理

 

佐々木町長:

岩手町では、大人と学生が語り合う「トークフォークダンス」という取り組みを行っています。これは短時間で共有できる手法で、実験的に取り入れているところです。

 

ちなみに下川町は、取り組みの進捗管理に評議委員会の設置や指標の活用を進めていると聞きました。具体的にはどのような内容でしょうか。

 

 

谷町長:

SDGsをツールとして取り入れていくには、主観的と客観的、両方で評価していくことが重要だと思います。

 

客観的評価では、住民の目、外部有識者の目、SDGs専門家の目、これらを入れるために、評議委員会を設置して、住民や外部の方に委員になっていただき、指標や事業の進捗に対して評価をしていただいています。

 

目標の1番目「みんなで挑戦し続けるまち」というところで、「レベルを上げていく」「希少価値をしっかりつくり上げていく」「スピード感を持ってやる」「改善力をつけていく」「未知への挑戦をしていく」5つの概念を持ってやっています。

 

改善のところでは、SDGs推進町民会議をつくっていまして、11名の住民のメンバーに事業推進においてリーダーになっていただき、ワーキングを進めています。

 

また、農協、観光協会、林協など8団体で産業活性化支援機構を設置して、その中にタウンプロモーション推進部をつくりました。ここでは、移住定住政策、起業家、人材登録、まちづくり、この4つの柱を運営しています。

 

 

 

■ 情報収集、人材ネットワーク、課題選出から「PDCA」を回す

 

佐々木町長:

進捗管理をしてどう評価していくか、どう情報発信をして町民のみなさんやステークホルダーのみなさんと共有していくのか、非常に大事だと思います。谷町長のお話、大変参考になりました、ありがとうございます。

 

タウンプロモーションの力、役場だけでなくて民間の発想で取り組まれているのが素晴らしいですよね。

 

PDCAを回していくサイクルだと3年くらい時間がかかってしまいます。それでは間に合わない時代に入ってきていますので、走りながら評価していく仕組みを取り入れながら、やっているプロジェクトについて、町民のみなさんと良い・悪い・改善点を語り合う場が必要だと思いました。

 

谷町長:

おっしゃったPDCAでは「プレP」というのが大事だと思います。Pは政策形成や企画立案だと思うんですけども、「プレP」は問題意識、危機意識、情報収集、人的ネットワーク、課題の抽出。プレPがしっかりできるようになることで、PDCAが回っていく。「PPDCA」を365日考えられることもリーダーに必要だと思っています。

 

出典/SDGs未来都市等進捗評価シート

 

 

■ SDGsの取り組みの成果は? 移住者増の秘訣

 

佐々木町長:

下川町の人材がきちんと配置されているところは、ぜひ参考にしたいです。岩手町も移住者が少しずつ増えてきたり、2拠点で住み分ける人も増えているのですが、下川町も移住者が増えているとお聞きしました。成果はいかがでしょうか?

 

 

谷町長:

移住者による起業では、タウンプロモーション推進部が「シモカワベアーズ」という取り組みを行っています。これは勢いのある熊のように事業をつくり上げていくんだとネーミングされもので、下川町で「スキ」を仕事にしたい人を、地域おこし協力隊に任命する取り組みです。

 

出典/下川町

 

また、今はコロナで開催することが難しい状況ですが、「タノシモカフェ」という移住者との交流イベントをやっていまして、毎月多くの住民が交流を楽しみつつ、下川町について話し合っています。

 

おかげさまで、4年間で96人の移住者になりました。下川町の3,200人の人口からしたらすごい数字で、下川町のSDGsの取り組みに魅力を感じて来る人がほとんどです。

 

 

 

 

佐々木町長:

何をやるにも人の力が大事、人のつながりを醸成していく仕掛けが必要だと思っているので、イベントのお話は大変参考になりました。

 

岩手町では、町の中の情報共有や人のネットワークづくりがここ数十年で分断されている感じがして、町内の結びつきがまだ弱い感じもあります。

 

人の気持ちを内向きでなく未来に向けていくものが必要で、それは未来都市のプロジェクトかもしれませんし、自分に課せられた使命かもしれません。行政と町民の間に溝があるように感じているので、タッグを組んでやっていけるような空気にしていきたいと思っています。

 

 

谷町長:

人のつながりの部分はなかなか難しいですよね。北海道も感染者が多いときがあり、町民が集まるのがこの1年間難しかったんです。だからといって町民全員がリモートワークできるわけじゃありませんので、我慢の時期だと思うんですが、行政として紙媒体やデジタルも活用しながらメッセージを発信するのは大事だと思っています。

 

下川町は告知端末を全戸に設置していますので、動画でメッセージを発信しました。住民のみなさんが安心できるメッセージの発信や環境をいかにつくっていけるかが重要だと思っています。

 

最終的にSDGsの落とし所としても、下川住民がいかに豊かで幸せな暮らしができるかだと思っています。そういう目標を掲げながらプロセスを育んでいきたいと思っています。

 

 佐々木町長と谷町長

 

 

■ 町民と自ら町をつくることが人材育成につながる

 

佐々木町長:

谷町長もおっしゃっていましたけれども、町が潤う、幸せになる、豊かになる、これを自らつくり出すことができる、そういうことに尽きるのではないかなと私も思っています。

 

先程から人材育成を申し上げていますけれども、将来の町や経営のデザインをする力、人の話を聞く力、ファシリテーター力、人の間に入っていける力、こういう力を持った人材を育てることを、数年かけてやっていくのが大事かなと思っています。

 

そこで総合計画は、誰でもわかるようなイラストを主体にして、文言を厳選し文章を少なくしてつくりました。また、計画をつくるためのワークショップの際には、役場の職員がファシリテーターになるなど、今までやってないようなことをやってみました。

 

今まではすべてを外部コンサルにお願いしていたものを、職員が主体となってつくることで意識が高くなった気がしています。10年後の目標は「笑顔がいっぱい岩手町」で、もう一回自分たちの手で町をつくっていこうとしています。

 

谷町長:

下川町でも観光協会が中心となって、森林の町としてのシンボルカラーを町民から募集して「しもかわグリーン」を決めました。町民が決めた色を、ポスターやパンフレットや公共施設、公営住宅にも使ったりしています。その次の取り組みとして、「ありたい姿」のロゴを来年度に向けて発表していきたいと考えています。

 

こういったブランディング戦略を持って、町民とともに発信力を高めていきたいと思います。ICT技術も進んでいますので、ここも活用しながら、SDGsをきっかけに取り組んでいきたいですね。

 

また、7/1からセイコーマートさんとも宅配事業をスタートさせます。地域おこし協力隊を採用し、地元ハイヤー業者に送り込んで、コンビニの荷物を送り届けるというものです。大手の配送業者の荷物も一部やっていきます。地域の買い物難民となっている人たちが取り残されない町としての取り組みで、SDGsの取り組みの一つとして考えています。

 

佐々木町長:

まさしくソーシャルビジネスですね。地域課題があるなかで、誰と結びつけばいいのか、潤いを循環させるにはどうしたらいいのか、もう一度洗い出して、若者たちに選ばれるようなかっこいい町になっていければいいなと思っていますので、今後も勉強させていただけたら嬉しいです。

 

 

 

谷町長:

今後は、コンセプトで自治体が連携していくことが重要だと思っています。川とか道路とか地続きのところが連携していたところを、今後は飛び地でもコンセプトで連携していく、コンセプトアライアンスに取り組んでいるところです。

 

お互いに課題を共有してそれぞれの町のいいところを吸収しながら、一緒に進めていけたらと考えていますので、今後もよろしくお願いいたします。

 

佐々木町長:

ありがとうございます。連携しながら新しいまちづくりにチャレンジしていきたいと思っていますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。