岩手町SDGs未来都市共創プロジェクト

岩手町SDGs未来都市
共創プロジェクト

佐々木町長が行く!

SDGs未来都市の首長同士の対談を通して、持続可能な未来の共創を目指す『町長対談企画』

第四弾では東京都豊島区の高野区長と、岩手町の佐々木町長の対談をお届けします。

 豊島区は2014年、日本創成会議によって東京23区で唯一「消滅可能性都市」の指摘を受けました。それをきっかけに高野区長はこれまでと違ったダイナミックな政策を実施、今では「持続発展都市」と言われるまでになりました。そして、2020年の7月には内閣府から「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」に東京都で初めてダブル選定されています。

6期に渡り改革を続けられる豊島区高野区長と1期目の岩手町佐々木町長が描く未来。お二人には町づくりに対する共通の思いがありました。大きく環境が違う中でお二人が描く未来はどのような未来なのか?対談を通して語っていただきました。

【プロフィール】

豊島区長 高野 之夫(6期目)

1937年12月25日東京都豊島区生まれ。60年立教大学経済学部卒業。83年豊島区議会議員(2期)、89年東京都議会議員(3期)、99年豊島区長に就任。就任して20年弱、巨額の赤字財政や消滅可能性都市の指摘など、重大な課題を突き付けられた豊島区を、人が集まる魅力あるまちへと導く。

岩手町長 佐々木 光司(1期目)

2018年6月〜現在。1959年8月2日、岩手町沼宮内生まれ。1983年4月 岩手町役場採用。2017年3月岩手町役場を退職し、社会起業大学でソーシャルビジネスを学ぶ。2018年6月岩手町長に就任。岩手町の先人が築き上げてきた「農業」「スポーツ」「アート」という3つの特徴的な文化的要素に着目。変化が激しい時代、そして人口減少、少子化が深刻化する中で、岩手町ならではの持続可能なまちづくりを目指す。

■ まちのイメージを変えたい

高野区長:
私は豊島区の池袋で生まれ育って大学も立教大学ですから池袋から出たことがないんですね。
戦後豊島区を代表する池袋には闇市がたくさんでき、まちが大きくなる様子を間近で見てきました。ですが「怖い」、「汚い」、「暗い」といったイメージが持たれるようになり、そのイメージを変えるのが私の役目だと考えてきました。まちを変えたいという強い思いで区長になりましたね。どうしたらまちのイメージを変えられるかをずっと考えていました。


佐々木町長:
そのような強い思いで区長になられたのですね。
私も役場の職員を早期退職し、ソーシャルビジネスを東京で学んだことがきっかけで、町を変えたいと町長に立候補しました。
歴史や考古学には個人的に憧れがあり勉強していましたが、ある方から「岩手町も縄文文化の遺跡や遺物がある町だから歴史を忘れちゃだめですよ。6000年前からの文化の営みが町を発展させたのです」という言葉が心に残っているんです。今やろうとしていることは10~20年後の岩手町を作るだけではなく、100~200年後に引き継がれるような、子孫に希望を残す町にするのが町長の役目だと思っています。

文化づくりはまちづくり

高野区長:
区長になって初めて知ったのですが、豊島区は非常に大きな借金を抱えていたんです。就任当時、借金は一般会計とほぼ同額の872億円あるのに対し、貯金はたった36億円しかない状況で、まさに財政破綻の危機にありました。実質836億円の赤字、経常収支比率も99.5%の状況でほとんどお金が使えない状況でした。私が区長に就任してからは全て情報を公開したので、初めて情報がオープンになって事実を知って驚いた区民も多かったでしょう。

佐々木町長:
岩手町も経常収支比率が87%で、多くの制約を抱えています。

高野区長:
私は経常収支比率99.5%では何もできないので、まずは経常収支比率70%を目指そうと動き出す中で、あらゆる改革を行う必要がありました。経費は絞れるものは絞って、人件費も削減し、多くの施設を手放しました。職員や区民の皆さんも閉塞感があり、何も出来ないような状況で夢も希望もありませんでした。どうすれば区民の皆さんに夢や希望を与えられるか、将来があるかと考えた時に”文化”しかないと思ったんです。もちろん文化で飯が食えるかという批判もたくさん受けました。

写真提供:豊島区 「Hareza池袋」

高野区長:
そのような中で”池袋に宝塚歌劇団を呼べないか、宝塚歌劇団を呼べば池袋は変わるのではないか”と考えました。
初めて宝塚歌劇団の方にお会いした時、「池袋は宝塚歌劇団に見合いません」と言われて、何回も断られ続けました。しかし、今では8つの劇場からなるHareza池袋ができ、その中で宝塚の公演が行われています。そして、宝塚歌劇団だけでなく歌舞伎の方にも公演をしていただくことでまちが変わってきました。今は東京芸術劇場に負けないくらい定期公演をやってもらえるようになったんですよ。

佐々木町長:
素晴らしいお話ですね。
私は実は宝塚の隠れファンなんです。岩手町の出身に戦前の元宝塚歌劇団スターの園井恵子さんという方がいて、私はその方を語り継ぐ活動をしています。豊島区で宝塚の公演があることは非常に驚きましたし、やはり豊島区は東京の文化の中心の一つだと思いました。宝塚が豊島区で公演を行うようになって変わったことはありますか?

高野区長:
今まで池袋に来ていなかった人が宝塚をきっかけに行き来してくれるようになりました。豊島区の主要な関係人口の一つですね。
また中学校全校生徒に宝塚を見せることもします。最初は驚く区民も多かったですが、見た人は感動されますね。外から来てくれる方がまちを変えてくれるのだと実感しました。

写真提供:岩手町

高野区長:
岩手町には彫刻の作品が多くあると聞いています。どのくらいあるのですか?

佐々木町長:
町の中に石の彫刻が130くらいあります。「石神の丘美術館」という野外彫刻の美術館には特に力を入れています。2回リニューアルをして、今は年間3万人を超える人が来てくれるようになりました。
岩手町は昭和48年から町産の黒御影石を使用した、岩手町国際石彫シンポジウムを開催していましたが、平成15年で開催を辞めてしまいました。結果的に町には価値のある財産が作品として残りましたが、町民の彫刻への興味はだんだんと薄れてしまい、続けていたらよかったなと今では後悔しています。

高野区長:
今でもその作品が点在することで町全体がアートの町だと感じますね。

佐々木町長:
アートが将来的に価値を生むと思っています。どんな時代でも若い方が憧れや希望を持って、町に関わって生活してくださる、そういう町にすることをあきらめたくないのです。岩手町には「農業」「スポーツ」「アート」という3つの文化に先人の先取の意気込みと努力があり、町の特徴となっています。そのために文化の力をどのように活用すればいいのか試行錯誤で進めていますが、今まで岩手町で行ってきたことを受け継いで、後世に残したいと新たに思い始めています。豊島区のアート・カルチャーは非常にバラエティーに富んでいて大変勉強になります。

■消滅可能性都市から持続可能都市へ

高野区長:
まちづくりがようやく進んでいた矢先、7年前に東京23区の中で唯一消滅可能性都市と言われました。1日の乗降客が270万人にもなる日本屈指のビッグターミナル「池袋駅」を抱え、当時は人口27万人に達していました。さらに人口が増加傾向にあった本区の今後の発展を疑う者は少なかったと思います。しかし与えられたのはこの不名誉な肩書でした。大変ショックを受けましたよ。その理由は、2040年までに20歳~39歳の女性の転入が大幅に減ると予測されたことが「消滅可能性」と見なされた要因と聞いています。この問題は本区だけでなく日本全体で進行する人口減少問題と捉え、「女性と子どもにやさしいまちづくり」、「高齢化への対応」、「地方との共生」、「日本の推進力」という4つの柱を基軸に、“まち全体が舞台の誰もが主役になれる劇場都市”「国際アート・カルチャー都市構想」を推進してきました。

佐々木町長:
豊島区とは違いますが、地方も消滅可能性都市を多く抱えており、岩手町もこのままだと2045年あたりには人口が今の半分、6,000人台になってしまうという推計が出ています。

高野区長:
4つの柱の中で、取り急ぎ「女性と子どもにやさしいまちづくり」をして、若い女性の転入者を増やさないといけないわけです。その時に、岩手町の政策参与でもいらっしゃる立教大学の萩原なつ子先生が「としまF1会議」の座長を務めてくださり、その窮地を救ってくださいました。

佐々木町長:
岩手町もSDGsの視点を政策にどう取り入れるかという視点で、萩原先生には大変お世話になっています。


参考:https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_00449/

高野区長:
萩原先生の先導のお力で「としま100人女子会」を開催しました。ここから合計643件もの意見が集まり、それらを踏まえて子育て、まちづくり、ワーク・ライフ・バランス、広報、都市ブランディングなどチームごとに分かれて施策案の検討を重ねました。その後「としまF1会議」として具体的な提案が行われ、最終的に11事業、予算8千800万円で実際に動き始める形となったんです。行政と一般市民が協働してまちづくりに取り組めるという道が拓かれたことがとても大きな進化でした。これを機に消滅可能性都市から持続発展都市へ大きく進むことができました。

参考:https://www.businessinsider.jp/post-171887

高野区長:
他にも「消滅可能性都市」とみなされたことが政策を大きく変える引き金となりました。30年後豊島区がなくなってもいいのか、このチャンスを活かさなければと熱い思いがこみ上げてきたんですね。
思い切って消滅可能性都市からまちを変えていこうということで、23のプロジェクトを全て、5年間で一気に進めたのです。
おかげさまで人口が増え、納税義務者がこの5年間で2万人も増えました。児童を放課後も預かる施設も、22の全ての小学校や隣接する施設などに整備しました。思う存分働いていただいて、そして納税もしていただく。補助金もうまく活用しました。

佐々木町長:
岩手町もこれから大幅に人口が減る予測が立つ中で、人口が減っても若者が街に可能性を感じられるような、シビックプライドをいかに保てられるかが大事だと思っています。
岩手町では農業・スポーツ・アートの3つの視点から、”岩手町”のブランディングに力を入れ始めました。他の町と差異をしっかり磨き上げして、若者が誇りを持てるような町に仕立て直しています。

高野区長:
やる気満々ですね!

佐々木町長:
手探りですが、このままじゃだめだと。泥船に乗って沈むよりはチャレンジしてやりたいことをやらせて欲しいと訴えて町長に立候補したことが全ての力の源になっています。あとは人材育成により力を入れていきたいですね。可能性を信じることができるような町民性を育てていきたいと考えています。

高野区長:
町民を巻き込んでプロジェクトも推進されていますよね?

佐々木町長:
リビングラボの活動をしています。町を実験フィールドとして農業や森林などテーマを決めてプロジェクトを立ち上げて、今年はいろんな調査を行いました。

高野区長:
これは私たちも見習って、ぜひみんなを巻き込んでいきたいですね。

 

■ 誰もが主役になれるまち

参考:https://www.city.toshima.lg.jp/toshimanow/index/mainstage/index.html

高野区長:
国際アート・カルチャー都市構想によるまちづくりが認められ、「国際アート・カルチャー都市」として2020年の7月に内閣府から「SDGs未来都市」「自治体SDGsモデル事業」に選定されました。本構想の基本となる「まち全体が舞台の誰もが主役になれる劇場都市」は、SDGsの理念や将来像と考えを一つにするもので「誰をも受け入れ、誰からも受け入れられ、持続して発展する豊島区」の実現は、SDGsの様々なゴールにもつながると考えています。

佐々木町長:
先程、豊島区のあちこちをご案内いただいて、「4つの公園を核にしたまちづくり」、そして公園をつなぐ電気バス「IKEBUS」や、”トイレ区長”とも呼ばれるほど公衆トイレに力を入れきれいにされている話もお聞きしました。街が楽しくあるためにはアートやデザインの力は必要だと改めて思いました。これは都会でも田舎でも見過ごされてきたことだと思います。庁舎も隈研吾さんの設計ですよね。アートでまとまっているのが素晴らしく、豊島区民の誇りにつながりますね。

画像提供:豊島区

高野区長:
なかなか”文化”は目に見えないですが、将来の夢・希望ですよね。あれもだめ、これもだめでがんじがらめになった時に、どういう風に区民をリードしていけばいいのかと悩みましたが、文化というのは人を元気にして賑わいを作って未来を作るんだと実感しましたね。
未来に向けて文化と教育などのソフト面を大事にしながら取り組みを続け、豊島区の「国際アート・カルチャー都市」を目指すまちづくりの過程の中で、SDGsの取り組みもさらに組み込んでいきたいと考えています。

■ ピンチをチャンスに変える

高野区長:
消滅可能性都市に選定されなければ、萩原先生との出会いもありませんでした。”ピンチをチャンスに”変えていくことがとても大事だと思います。
地方との共生も方針の中で謳っています。大都会でありながら75歳以上の高齢者が全国市区部において日本一の豊島区です。
地方との共生、連携を取ってお互いに協力しあいながら、人が減っても地域を支えてくれる人を育てていきたいと考えています。今は毎年3000~4000人と人口が増えていますが、その多くは地方からの流入ですので地方との共生はしっかりと行っていきたいと考えています。

佐々木町長:
選挙の時に「ピンチをチャンスに」という言葉を使いました。私は悔いのないように死ぬまで地元で暮らして、ゆくゆくは家業も継いでビジネスをしたいと思っています。ブランド力がある町に育て上げたい。東京駅からのアクセスの良さも大いに活用して、”稼ぐまちづくり”をしたいと思っています。

高野区長:
”稼ぐまちづくり”は同じキャッチフレーズですね。”稼ぐ”という言葉に批判もありますが、私は商人ですから公民連携を積極的に行政の中にも取り入れていきたいと考えています。

佐々木町長:
めげないのは大事ですね。何か新しいことをスタートさせると批判も受けますが、そのためには自分が希望、ビジョン、信念を持っていることが大事だと思います。
これからの取組みとして、さらに農業にも力を入れたいと考えています。脱炭素、有機農法を推進するような新しい方向性がわが国でも示されました。農業は2030年に向けて非常に成長する分野だと思っています。今まで以上に違う形態の農業が出てきて、生産付加価値もつくと予想しています。岩手町が先駆的な取り組みを作り上げられるように頑張りたいです。

高野区長:
岩手町の取り組みを3つのポイント「農業」「スポーツ」「アート」で明確に出されていて感心しました。とても発信がお上手ですね。これからの岩手町の2030年への目標が素晴らしいなと思います。
岩手町はまちにモニュメントが点在し、そしてまた自然がとっても豊かですね。豊島区にはない環境です。

佐々木町長:
ぜひ岩手町にもお越しください。東北新幹線いわて沼宮内駅は東京駅から新幹線で2時間半ですので、私たちもアクセスの良さを強みにして多くの都市とつながっていきたいと考えています。

高野区長:
SDGsのつながりでリーダーシップを取ってお声掛けしてください。

佐々木町長:
ありがとうございます。ぜひ今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

※1
消滅可能性都市:20~39 歳の女性人口に着目し、2010 年から 2040 年にかけて、 20~39 歳の女性が 50%以上減少すると推計した自治体