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世界のSDGs

この標識に取り残されている存在は?

 

そもそもジェンダーって? つくられた規範やイメージ

 

ジェンダーの問題って、女性の問題でしょ?

本当にそうでしょうか!?

 

突然ですが、みなさんが何気なく使っている「ジェンダー」という言葉。改めてどんな意味なのか、ご存知でしょうか。

 

ジェンダーとは、生物学的な性差(sex)に付加された、社会的・文化的性差(gender)のことを指します。つまり、社会での役割 や 文化によって後付けされた性 とも言えます(出典/PKO)。男性/女性だけでなく、LGBTQ+も含みます。

 

さて、ここで言われている「社会」や「文化」について改めて見てみましょう。

 

「文化」とは、集団生活において学習・伝達されるものの総体というふうに説明する人もいますが、一般に生活様式全体のことと説明されています(出典/コトバンク)。文化は、伝統、思想や価値観、メディア、教育、さまざまな要素によって形づくられています。

 

そして「社会」は、複数の人々が持続的に一つの共同空間に集まっている状態、またはその集まっている人々自身、ないし人々のあいだの結びつきと説明されています。わたしたちは、実存している世界とは別の世界をつくり出し、その世界のなかで秩序をつくって、これを「社会」と呼んでいます(出典/コトバンク)。

 

これまでに紡がれてきた「文化」のなかで「女性とはこういうもの」「男性とはこういうもの」という規範やイメージもつくられてきました。人々はこれを理解して、それぞれに表現し、それを「社会」のなかのシステムにも反映してきました。

 

そして、そのシステムのなかで生きることでまた、わたしたちは情報を受け取り、文化を再現・維持し続けています。

 

「ジェンダー問題」と言えば、その優先度の高さから「社会における女性のスペースが小さい」という問題で多くの人に認識されていますが、実はそれだけではないのが「ジェンダー問題」なのです。

 

 

問題の見えていない部分「意識」や「システム」の影響

出典/Teatures Initiative

 

なぜ女性の社会進出はなかなか進まない? なぜLGBTQ+ の人たちの婚姻制度が認められづらい? なぜこれまでの社会システムのあり方は、なかなか変わらないのでしょう?

 

これらの問題を捉えるときに意識したいのが「氷山モデル」です(出典/Teatures Initiative)。これは、問題の構造全体を氷山にたとえ、海から出ている部分(見えている世界)と、海面下にある部分(見えづらい・見えていない世界)とがあることを表したものになっています。

 

問題に取り組むときには、わたしたちが見えていない、海面下にある部分にも目を向ける必要があります。前述のようなジェンダー問題もその原因を探っていくと、この海面下のところにある、わたしたちの持つ「意識」、そこに働きかけている「社会の構造」の影響に気づかされます。この二つは相互に影響しあって存在しています。

 

 

たとえばわかりやすいところで、文化のひとつの構成要素とも言える「教育」や「メディア」が挙げられます。

 

実世界にはすでに多様な性自認(ジェンダーアイデンディティ)の人が存在しているにもかかわらず、男性と女性しか描いていない絵本や教科書、男女で席を分ける教室など、実世界を反映していないものがたくさんあります。

 

これらのものや環境からは、男女以外のジェンダーを排除する “見えないメッセージ” が発せられています。

 

幼い頃から多様なジェンダーの人たちに接する環境にいれば、それがその人の「普通」や「当たり前」に、その逆に、男女だけの世界ばかりを見続けたり、多様なジェンダーの人と付き合いがなかった人にとっては、それがその人の「普通」や「当たり前」になってしまうかもしれません。

 

その結果として、男女以外のジェンダーの人たちに対して過剰反応が起きたり、どんなふうに接していいかわからないといったことが起きたり、その先に差別問題へとつながってしまったり・・・このつながりや影響については、世界でもさまざまな研究が進められています。

 

標識やロゴなど町のなかにもジェンダーにまつわるものがたくさんあります

 

これまで、わたしたちの持つ意識や思想のアウトプットとして、現実とは別に存在する社会や秩序をつくり、それを回すためのシステムが実装されてきました。

 

歴史的な役割分担では、主に家庭は女性が、社会は男性がシステムをつくりあげてきました。歴史の教科書を思い返してみてください。男性以外のジェンダーの人が登場する回数は、どのくらいあるでしょう? 現在つくりあげられた、いわゆる ”社会”という世界 は、主には男性の体や意識などに合ったシステムで動いている部分がほとんどです。

 

そのような理由から、女性がここに参加した際に合わないところが出てくるだったり、他のジェンダーの人が入りにくかったり、さまざまな問題が起こっています。さらに、それが当たり前としてあることに慣れきっている男性にとって、その問題や重要性が伝わりにくいということで、なかなかシステムが変わりづらいということも起きています。

 

「社会やシステムが、私たちにどのような思い込み(バイアス)を与えているか」

「ジェンダー差別や不公平の問題に、社会やシステムがどう影響しているか」

 

ジェンダーの問題に取り組んでいくことには、このような現実世界と乖離している「意識やシステムをどうしていくか?」の話も含まれます。すべての人の人権を守るためには、それぞれに対応した社会サービスや活躍できる仕事が必要となります。

だからこそ「ジェンダーの問題」は、すべての人に関係する話なのです。

世界では、このようなジェンダーに対する意識の変革やシステムの変更において、あらゆる取り組みが進んでいます。今回の記事では、これらの問題に対し、他国がどのように取り組んでいるか、教育・企業や経済・法律、それぞれの分野でご紹介していきます。

 

 

こどもの頃から多様な世界に触れる。おもちゃやアニメもアップデート

https://youtu.be/BWSbH9JQlk4

 

たとえば白い肌・ストレートの金髪ヘア・細身のバービー人形。アメリカ人と言えばこういうイメージという「ステレオタイプ(固定観念)」によって作られた人形が、ズラリとおもちゃ売り場に並んでいることが、こどもたちにどのような影響を与えるでしょう? 

 

人形によってつくられるイメージによって「ストレートヘアが良い」という思い込みがこどものなかにできたり、そこから天然パーマをストレートに直さないといけないという思い込みができたり、そうでない子どもをいじめることにつながったり… そんな可能性がないとは言えません。

 

アメリカではそういったことから、車椅子に乗っているバービーや、皮膚疾患を持つバービー、義足のバービーなど、多様な人種、髪質、体型を反映させ、170以上のバリエーションを持ったバービーが誕生しました。

 

また、ディズニーランドも多様性への取り組みから、ジャングルクルーズが大幅にリニューアルされ、インドとイギリスにルーツを持つ女性「アルバータ」が追加されました。

 

「サイから逃げて木に登る5人組」も、これまでは白人男性の探検家とアシスタントの黒人男性たちだったものが、より多様な人種で構成されるように。ここには日本人のメンバーも入っているようです(出典/AMP)。

 

このほかにも、セサミストリートやトイ・ストーリーなどのアニメや、トランプカードの絵柄にも多様性の視点が入れられるようになったり、ハリウッド映画の主演選出にも反映されるようになりました。より現実に近い社会がつくられることが進められています。

 

 

企業でも求められる多様性。ジェンダーの思い込みに気づく社員研修

 

SDGsでは、ゴール8や10で、すべての人の働きがいと雇用環境の整備が掲げられています。

 

しかし日本では、女性・LGBTQ+の人びと、障害者、外国人、難民、難病などの人々の雇用機会が、しっかりと確保されているとは言いづらい状況にあります(出典/厚労省資料1, 資料2)。

 

ここにはさまざまな要因が考えられますが、前述の「思い込み」も作用しています。たとえば「力仕事だから男性が必要」「女性は結婚のためにすぐ会社を辞める」「管理職は〇〇ができないといけない」などの思い込みです。

こういった思い込みを取り払うべく、世界では、企業研修に「思い込み(バイアス)」に気づく研修を取り入れる企業が続々と増えています。日本でも、古着を売買するプラットフォームを提供するメルカリが「無意識のバイアスに気づくワークショップ」の資料を配布して一部で話題となりました。

 

あるアパレル大手企業では、多様性実現の妨げとなっている個々人の「無意識にある思い込み」を取り払うための研修を  社員38,000人に実施、さらに「2030年までに管理職に占める女性の比率を50%にする」との目標を打ち出していたりもします(出典/Sustainable Japan)。

 

また過去に、ある学校の試験で、意図的に女性合格者を減らしていたとのニュースが話題となりましたが、これも無意識下にあるバイアスが作用している一例です。このようなことの対策として、ある企業では、試験や採用に使われれる書類に、性別を記載する欄を設けないところも出てきています。

 

出典/内閣府

 

さらに最近では、こういった多様性への取り組みの有無が、投資や企業評価にも反映され、国内外で盛り上がりを見せるESG投資でも、ジェンダーに関する取り組みが重要視されるようになってきており、社会全体として多様性実現に向けて動き出しています。

 

国際労働機関(ILO)でも、思い込みに気づくバイアス研修も含め、組織にあるジェンダーへの思い込みに気づくための認識調査、言語分析、給与とキャリアアップにおける性差の分析などの実施を推奨しているなど、企業における多様性理解とその先の雇用創出が期待されています。

 

 

法律で性差別を禁止。行動規範の言葉を見直すところも

 

アメリカの新しい内務省のトップに、アメリカ史上初めて先住民出身者を起用するというニュースがありました。ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包摂)実現が進むアメリカでは、政治における取り組みも、いくつか出てきています。

 

ここまで触れてきたように、言葉や情報が意識や行動に大きく影響することから、下院では行動規範にある「父・母」や「チェアマン(議長)」などの性差を含む言葉を、ジェンダーニュートラルな言葉(偏りや思い込みを生まない言葉)に置き換える法案を、2021年1月に賛成多数で可決しました(出典/mashupNY)。

 

他にも「彼(he)」や「彼女(she)」を含むフレーズは「人(member等)」を表すものに(「himself」「herself」は「themself」に)するといった変更がなされたりなどもしています。

 

しかしながらこの政策には賛否両論の意見が出ており、政治家や議員へのジェンダーやバイアス理解も一緒に取り組む必要があると言えるかもしれません。

 

さらにいくつかの州では、すでに公衆トイレを含むすべての公共スペースで、性差別を表すような表記や建築物を禁止する法律も採用されています。ジェンダーニュートラルな建築の研究は一部で進んでいますが、アメリカでも、トイレやスポーツアリーナ、ガソリンスタンド、映画館、モールなどの一部で、ジェンダーニュートラルな建築デザインが導入されてきています(出典/FAST COMPANY)。

 

 

目標5に対して「わたし」「組織」「地域」「国」ができることは?

 

さまざまなジェンダーへの取り組みに触れてみて、いかがでしたでしょうか? 改めて社会や地域を見てみると、また違った視点で見ることができ、新たな気づきや発見があるのではないでしょうか。

 

社会には、さまざまなジェンダーの人が存在します。 SDGsの理念がまとめられている『2030アジェンダ』に書かれているのは「すべての人が身体的・精神的・社会的によく生きられる世界」。このような世界にするには、地域においてどんなことが必要でしょう?

 

17ゴールは不可分。他のゴールへの影響も想像しながら、ぜひ地域の人たちと一緒に取り組んでみてくださいね。

 

 

 

参考ソース/文献:

 

PKO ジェンダーとは

http://www.pko.go.jp/pko_j/organization/researcher/atpkonow/article070.html

 

ハーバード大学 ジェンダーバイアス

https://www.gse.harvard.edu/news/uk/18/11/preventing-gender-bias

 

ILO バイアスレポート
https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/—ed_dialogue/—act_emp/documents/publication/wcms_601276.pdf