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「デザイン思考」で解決策を見つける デンマークの教育現場

SDGsの達成度ランキングで常に上位トップ3に名を連ねる国、デンマーク。(日本は年々ランキングの順位を下げ、2022年は19位)

SDGsに対して意識の高いデンマークではどのような教育が行われているのでしょうか。

今回は、デンマークのソレ市にある、6歳から16歳の学生が通う公立学校「Pedersborg School」のHelena校長へのインタビューをもとにデンマークでの教育現場での取り組みを紹介します。

学校ホームページ(https://pedersborgskole.aula.dk/

「自転車で来ました!」と颯爽とヘルメットを外すHelena校長。日常生活からCO2の排出を意識するなど、SDGsに取り組んでいるとのこと。

すべてはSDGsに繋がっている

「Pedersborg Schoolでは、どんな教科の学習も、SDGsの17のゴールのいずれかに結びつけることを意識しています。このインタビューもゴール17(パートナーシップで目標を達成しよう)に該当していますね」

2年前、ゴール13(気候変動に具体的な対策を)に関する取り組みを始めました。
学校で飲料用に購入した年間何千本のプラスチックボトルに入った水を禁止、全て水道へ切り替えました。生徒は水筒に水を入れて飲むようになりました。

プラスチック製のナイフやフォーク、使い捨て類のものも禁止にしています。

その他にも、いらなくなった洋服を学校で集めて、いつでも生徒が無料で好きな服を持って行けるようにしています。

学習の場だけではなく、生徒たちが良い行動をしたときには
「よくやったね、それはゴール17について取り組んだんだよ、わかる? だってあなたは友達を助けてあげたんだから!」
と声を掛け、日々の行動もSDGsに繋がっていることを伝えることで、自身がSDGsに取り組んでいることを自覚させます。

インタビューを通して、なにげない行動や取り組みであっても、SDGsとの繋がりを考え、それを話したり、言語化したりすることでSDGsの意識を高め、自分事化していると感じました。

気候変動に対応する取り組みを五感で感じられるような工夫を

参照:国際連合広報センター

 

世界では、地球温暖化や異常気象による自然災害など気候変動が深刻化しています。

特に、雨に関しては、台風の大型化、大雨が増える、干ばつや渇水が増えるなど地域や気候によって様々な課題があります。

学校では、雨によって屋根の上に溜まる水はもともと地下にあるパイプに流していたのですが、気候変動による雨の増加から地下に流す許容量を超えるようになりました。

そこで、雨水を学校の地表に流す取り組みを実施。
地表に流れた雨水によって、草木の成長や、湖の水が増えることでの魚やカエルが住みやすくなりました。これは、学校の中の生物多様性に繋がります。

このような取り組みは、生徒達が先生の教えるSDGsについて実際に「示す」ことができます。

本や動画から学ぶだけではなく実際に「においを嗅ぐ」「触る」「見る」ことで生徒の理解向上につながるからです。

他にも、料理を学ぶ時間には材料の一部であるハーブやベリーなどは学校の敷地内でとれたものを使うなど工夫しています。

 

「デザイン思考」で解決策を見つける

Pedersborg Schoolでは、何年もかけて「デザイン思考」を身につけることに取り込んでいます。

「デザイン思考」とは、デザイナーがデザインを考案する際に用いる、問題発見・問題解決の思考法を、ビジネス上の課題解決のために活用する考え方のことです。

1. 共感する、2. 定義する、3. 考える、4. プロトタイプを作成する、5. テストする、という 5 つのフェーズを行ったり来たりすることが特徴です。
参照:https://monstar-lab.com/dx/about/design-thinking/

問題が起きた際、「できる/できない」の話で物事を片付けるのではなく、「私には課題があるが、その解決策は一体どんなものがあるだろう?」と1つ解決策を試し、フィードバックをもらったらまた解決策を試す。これを諦めずに続けます。

まず、先生方が「デザイン思考」を取り入れ、実践することで、今では生徒自身が「デザイン思考」を理解し始めました。

「昨日と同じことをしても現状や世界は変わりません。常に新しい方法を探すことが重要なのです。」とHelena校長は言います。

「間違い」を恐れず、その経験が重要であると生徒たちに伝えています。

1つのテーマに集中する「プロジェクトウィーク」

デンマークでは、全土の公立学校で、それぞれの学校の教師がテーマを1つ設定して学習する「プロジェクトウィーク」が存在します。

今年のPedersborg Schoolのテーマは、「人生について」でした。大きなテーマですが、これをシンプルな小さい物事に落とし込んでいきます。

ここでは、先生はファシリテーション役としてサポートに徹し、生徒が自ら学ぶ手助けをしていきます。

1週間後、どんな問題を見つけてどのようなアイデアや解決策を見つけたのかそれぞれ発表します。

さいごに

今回は、デンマークにある公立学校の取り組みを紹介しました。

学習や日々の行動をSDGsに繋げる意識や、課題解決のための考え方など、教える内容だけでなく、工夫できる点は多くあると感じました。

岩手町にある公立の小中学校6校でも、SDGsを学び、プロジェクト活動などの実践活動に取り組んでいます。

例えば、川口中学校では、町の魅力を紹介するポスターを制作しました。

参照:広報いわてまち 令和5年3月号(https://town.iwate.iwate.jp/town/wp-content/uploads/2023/03/2023031011.pdf)

 

他にも、一方井小学校と3社の企業がコラボして、ドローン配送の実証実験を行いました。

参照:広報いわてまち 令和5年3月号(https://town.iwate.iwate.jp/town/wp-content/uploads/2023/03/2023032099.pdf)

Pedersborg Schoolは、そのSDGsの取り組みが評価され、UNESCO(ユネスコ:国際連合教育科学文化機関)の「グローバルネットワーク」に加盟することになり、同じくネットワークに所属している、スペインのバルセロナにある学校と交流事業を行っているそうです。

参照:https://pedersborgskole.aula.dk/baeredygtighed

 

インタビューの最後、「岩手町の学校とも何か一緒に活動しませんか…!」と聞いてみました。

「ぜひやりましょう!東京に日本語の話せる友人もいるので、まずはオンラインで交流してみたいですね!」と笑顔でお返事いただきました。

SDGsを軸に、世界とつながり合う岩手町の学校の未来を想像して、ワクワクしました。実現させたい!

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