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【保田小学校】過疎が進む町で人気の道の駅にはアイディアが詰まっていた

2022年5月、廃校を活用した道の駅「保田小学校」を視察しました。

鋸南町とは…

保田小学校がある千葉県鋸南町(きょなんまち)は、房総半島の内房の真ん中ほどに位置し、東京からのアクセスは車で約1時間半、電車で約2時間半の町です。

また、今年の大河ドラマの主役の一人でもある源頼朝が平家に負けて逃げ延びた地としても有名ですが、綺麗な海岸線は内房のため比較的波も穏やかで多くの海水浴場が広がる風光明媚な地域です。

一方で、鋸南町の人口は現在約7000人、千葉県下54市町村の中で最も人口減少率が高い自治体で、1950年代から人口減少が続き、人口減少と高齢化が深刻な課題を持つ地域でもあります。

岩手町と共通点がある!?

岩手町は、都内から新幹線で2時間半のアクセスが良好です。

また、人口減少や高齢化、そして活用されていない廃校があることなどを比較すると鋸南町と同じような課題を持っている共通点がいくつか見えてきます。

このように岩手町と共通点もある鋸南町ですが、全国からも注目される施設があります。

それが今回訪れた「保田小学校」です。
「保田小学校」という名前ですが、2014年に廃校となっており、道の駅としてリノベーションされた施設で、SDGsの面でも注目を集めている施設でもあります。ここがなぜ注目を集めているのでしょうか、そして岩手町でも活かせるポイントを探りました。

保田小学校は千葉県安房郡鋸南町にある、2014年に廃校となった校舎を活用した都市交流施設・道の駅です。高速道路「館山自動車道」の「鋸南保田IC」すぐという車でのアクセス良好な立地に立っています。

敷地内に入ると体育館を活用した巨大マルシェがひときわ目を引きますが、校舎も教室を活用した宿泊施設など元の学校の雰囲気をそのまま残し、その雰囲気を活かした施設となっています。リノベーションのコンセプトとして、大人が懐かしくなるノスタルジックに浸れる、そして地元のみなさんにとっての思い出の場所を可能な限り残そうとするような、そんな思いが伝わってくる施設です。

駐車場には他県ナンバーの車が・・・

土曜日ということもあり、施設の横にある駐車場には多くの車が駐車していました。そのナンバーをチェックしていくと千葉県内だけでなく東京や神奈川など近隣首都圏からの来場者が多いことがわかりました。また、第2駐車場なども整備されており、日頃から来客数の多さを見て取ることができます。

建物の外観はスッキリとした印象で廃校という雰囲気はありません。それは、内部に入るとわかりますが、元々の校舎をすっぽりと覆っていることによります。そして、その延長部分を来客者が往来できるよう広いデッキとして活用しており、校舎自体にはあまり手を加えないつくりになっています。これはリノベーションコストを下げるだけでなく、このような古い校舎で問題になる断熱性の対策にもなっているようです。

1階へ

1階部分の校舎内には主に食事処が並んでいます。

メニューは学校給食を連想させるものが多く、懐かしい学校の給食を食べているような体験ができます。また、店名の一つには「3年B組」など少し懐かしい店名のお店も(あれは中学校でしたが・・・)。
また、店内の椅子や机は教室で使われていたものが活用されており、大人には少し小さいですが、これも懐かしさと共に楽しい体験になるのだろうと思います。食器も当時のものも使っていたりするとのこと。

食事処の横には、お菓子屋さんや子どもの遊び場もありました。

お店のポップに跳び箱を活用

通路には、岩手町で実証実験がスタートした電動レンタサイクルもありました!鋸南町の海岸線をこれで走ったら気持ちが良さそうで

一角には「まちのギャラリー」といった展示コーナーも…

保田小学校卒業の人には懐かしい校章も展示されています。校長のイスも当時のもの?!

さらに1階部分で目を引くのが、体育館を活用した巨大マルシェ「きょなん楽市」。こちらも外壁をすっぽりと覆いパッと見では体育館だったことがわからないようなスッキリとした外観です。マルシェに向かう途中に懐かしの二宮尊徳像がお出迎えをしてくれます。二宮尊徳さんは今、渋澤栄一さんと共に再注目されている偉人の一人。彼の地域活性化施策は今に通じるものがあります。

マルシェには地元の採れたて野菜や、学校をモチーフにしたお土産などが多く並んでいました。これらのお土産ものは保田小学校オリジナルグッズ、しかもなかなかシャレが効いたものが多く思わず買いたくなるものなんですね。このあたりは完全に地元の方向けではなく観光に来たお客様向けという感じです。これだけ展開できるということは売り上げもそれなりに見込めていることになりますね。

マルシェの外ではソフトクリームなども売っていて列ができていました。この地域の名産であるビワを使った珍しいソフトクリームなどもありました。

写真の「校長厳選」のイラストの校長先生は有名な大塚克也さん。この方のアイディアが随所に見られるのが保田小学校の人気の秘密の一つなのは間違いありません。

2階へ

2階部分には宿泊施設「学びの宿」があります。

個室から大部屋まで最小2人、最大15人泊まることができ、それぞれの部屋にはクラス名が付いています。

値段はけっこうリーズナブルです。一室を覗くと、教室の面影はそのまま残しつつ、ホテルのような空間になっていました。昼間は多くの人が訪れる保田小学校ですが、夜はひっそりと学校に泊まっている気分に浸れそうです。夏なら怪談話とか楽しそうですね。

各部屋にお風呂はありませんが、施設内に温泉があるので問題ありません。

実際にいくつかの部屋では宿泊している方もいる様子でした。

廊下は増設されているため広く、座ることのできるスペースやこの施設を建設するまでの歴史などが展示されていました。

デザインの工夫や施設のBEFORE/AFTERが見ることができます。

元々の校舎の壁が右側の窓部分、そこから校舎全体をすっぽりと覆って廊下を拡げているのがわかります。海辺をイメージするヨットの帆をイメージさせるシートが屋根に配置され、青空とのコントラストが映えたモダンな雰囲気とノスタルジックが融合した美しい建物となっています。

最後に

SDGsを意識したリノベーションや活用方法でも注目を集める保田小学校、このような廃校を活用した事例は日本にはまだまだ例がありますが、保田小学校は、そのアイディアに学ぶべきところがたくさんありました。もちろん車でのアクセスの良さなど地理的な要素もありますが、それだけではここまで注目を集める施設にはなっていないでしょう。そして、それらの取り組みは予算をかければできるものではなく、この施設を運営する方々の思いや工夫があってこそ、ということを感じました。

【今日のSDGs Point】

  1.  廃校活用として、地域の方々の思い出を大切にする様々な仕掛けが素晴らしい
  2. 学校で使っていた器材を今風にアレンジするとノスタルジッククールかつエコになる
  3. アイディア×思いで来場者が来たくなる仕掛けは作れる

これらは岩手町で進めていく廃校活用にも参考にできるものばかりです。

このようなポイントに加え、岩手町ならではアイディアや想いを反映させよいよりものへと繋げていきたいと思います!

 


■保田小学校

ホームページ(https://www.hotasho.jp/)

■岩手町

ホームページ「レンタサイクル実証実験はじめました」(https://town.iwate.iwate.jp/town/%e3%83%ac%e3%83%b3%e3%82%bf%e3%82%b5%e3%82%a4%e3%82%af%e3%83%ab%e5%ae%9f%e8%a8%bc%e5%ae%9f%e9%a8%93%e3%82%92%e3%81%af%e3%81%98%e3%82%81%e3%81%be%e3%81%97%e3%81%9f/)

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