エネルギーラボ(第3回前編)[いわて町ラボ2020開催報告]

「シュタットベルケってなに?」

2021年3月9日(日)18:30〜20:30、第3回「エネルギーラボ」を開催しました!今回は、岩手広域交流センター「プラザあい」とオンライン(zoom)のハイブリッド型で開催しました!

と、言いますのも、今回の講師、エネルギージャーナリストの西村健佑氏はベルリン在住!時差の中、開催されました。ベルリンは、朝でした^^

「エネルギーの先進地ドイツから岩手町の未来を考える」と題し、ご講演いただきました。

シュタットベルケとは、ドイツにおいて公共のインフラを整備する、自治体所有の公益公社。すなわち自治体が作る、地域の会社のことです。
シュタットベルケの話から、ドイツにおけるエネルギー関連のさまざまな事例をお話いただきました!

予定では、講義後、感想・質問共有のち、グループトークを行おうとしていたのですが…。
西村氏の静かな語り口から出てくる熱い言葉が会場に火をつけまして、なんと、現地、オンライン共にご感想・ご質問をたーーーーくさん頂戴しました。急遽時間配分を変更!現地24名、オンライン5名の参加者のみなさまと西村氏で、たっぷりお話ししていただくことになりました。以下に全てのご質問・ご感想を掲載します。一部の回答は、イベント後に別途西村氏から文書で回答を得たものになります。

【シュタットベルケに関して】

Q:シュタットベルケに市民が出資する理由、モチベーションはどのような感じなのか
A:シュタットベルケも何でもかんでもやっていいというわけではない。基本的には自治体が出資をしているので、税金を使っているということですから、堅い投資しかやっちゃいけない。赤字覚悟のリスクのあるようなビジネスはやらない。「シュタットベルケがこういうプロジェクトを実行するのでお金を集めます」というと、基本的に損はしないということがわかっている。ドイツの場合、固定価格買取制度で20年やると、20年後には投資が5%くらい増えて必ず返ってくるというのがわかっている。今は銀行に20年預けても1%も増えないので、自治体のシュタットベルケがやってくれる確実な投資で3〜5%儲かるならそっちのほうが銀行に預けているよりいいのではないかというのがスタートとしてあったかと思います。

Q:シュタットベルケとは、ドイツのどこにあるのでしょうか。
A:ドイツに800社ある。800くらいの自治体にあると思っていただければいいかと。ドイツの少なくとも10分の1から5分の1くらいの人は、シュタットベルケに関わる地域に住んでいると考えてもらえれば。

Q:町民はその自治体のシュタットベルケの運営状況や、その自治体の組合の様子や、省エネのための補助がどれほど受けられるかなどがどの町に住むかの選定基準になったりしているのでしょうか?
A:一部ではそのような理由で判断する人もいると思いますが、多くは職場などの別の基準で選ぶと思います。ただし、地元に組合がなければ作ろうという動きは日本よりも活発だと思います。

【ドイツに関して】

Q:ドイツのEVの普及状況と普及率が知りたい。
A:ドイツ国内の累積のEVは30万9000台、PHVは27万9000台。燃料電池車は808台です。国内の自動車全てに占める割合は0.6%です。2020年は手厚い補助金もあり、20万台弱がEVとなりました。これは新車全体の7%になります。

Q:ドイツはアパートなど賃貸物件も断熱されているのか?
A:ドイツは日本より賃貸が多い。自治体が持つ、住宅供給公社というところが提供しているものも多い。ドイツの場合、新築の家は断熱は義務。そのため基本的には新しい家は高断熱住宅しか建てちゃダメ、ということになっている。ドイツで80〜90年代に建てられた古い家の方が、今の日本の住宅性能よりもまだいいというくらいだと思います。

Q:太陽光電池の生産シェアは、中国1位?どいつでは、どこのユニットを使っているか?
A:
ドイツでも中国製のパネルが多いです。

Q:ドイツでは、作った電気を地域内で使うというインフラは整っているのでしょうか?
A:インフラが単純に送配電の話であればドイツも日本も技術的にはある程度実現できています。ビジネスモデルや制度としては両国ともこれからです。

Q:コロナ禍で換気量の確保が必要とされてくると思います。より効率の悪い熱交換器、又はOMソーラーの様な新鮮空気を吸った空気集熱が注目されていると思いますが、ドイツではその様な議論はありますでしょうか。
A:ドイツの建物は換気も基準が明確に定められています。(日本でもあると思いますが) 換気技術には詳しくありませんが、新築なら一般的に十分な換気はなされているはずです。

Q:ドイツの自治体では、黒字化されている自治体の割合はどれほどでしょうか?
A:正確な数字はありませんが、ほぼすべてなんらかの赤字や借金を抱えていると言えます。完全な黒字の自治体はないと思います。

Q:断熱で夏と冬で仕組みが異なるそうですが、どういったことでしょうか。また組織システムも異なるのでしょうか。組織システムについて、ですが、私の中では、需要家と工務店、行政、エネルギー会社など、ステークホルダー間の関係性の構築の仕方について、お聞きしたく、それが季節で異なる、ステークホルダーの参加もあるのか、をお聞きしたいと思いました。
A:季節間というのはあまりないと思いますが、プロジェクトはいろいろなステージに分かれており、特定のステージだけの参加などはあると思います。ザーベックの例は小さな自治体で数百のプロジェクトを実施しており、それぞれに参加者が異なりますし、PJごとの実施時期も異なります。

 

【日本に関して】

Q:他の地域ですでに行われている所あれば。2025〜ほかに日本ではじまっているところある?
A:住宅の断熱だったと思いますが、長野県などは積極的に高性能住宅普及に取り組んでいます。義務化よりは性能(建物の燃費)の見える化が多いと思います。

Q:電気の売り買いは、隣接市町村に限らないことですね。(電線でつながっているから?)
A:
限りません。電線がつながっている限り、どこでも売り買いは可能です。

Q:和風木造住宅で高断熱を実現するには?
A:竹内先生(第4回講師)に聞いていただくのがいいかと思うが、高断熱の家は作れます。ヨーロッパでは、高断熱の木造住宅、木造集合住宅が増えている。木造の建物で10階建てなどのものも出てきている。作り方次第で可能。

Q:家庭に太陽光パネル、お金がかかることがハードルでは?
A:初期投資はかかりますが、投資は確実に回収できるのがFITというモデルです。またこれを利用して近年はご家庭の初期投資0円で始められるモデルもあります。

Q:ソーラー発電、パネル単価(10年で10分の1)と、売電価格(10年で3分の1)のバランスは?
A:質問の意図がよくわかりませんが、ご家庭の屋根上太陽光の買取価格は日本では妥当な範囲だと思います。

Q:再エネで、日本の場合は個人や組合では、カベが多すぎるのでは。大規模、企業優先の買い取りだ→法の見直しを。
A:そのとおりだと思います。

Q:日本とドイツで国としてのエネルギー政策の考え方の違いが大きいので、自治体としてどう考えて行くのかが難しいと思ってしまう。
A:簡単ではないと思います。ドイツの場合は財政の自由がかなり与えられているということが日本との大きな違い。その代わり地方交付税交付金が少ないので、稼がないと自治体も維持できない。一方で、やはりお金を使わず、どうやって取り組むかという点では日本とドイツで共通する点が多いと思います。そのため必ずしも全くできないというわけではないと思います。

 

私(筆者)は、ドイツは高断熱住宅しか建てられない、ということに驚きました…。せっかく家を建てるなら、せっかくアパートを選ぶなら、高断熱住宅に暮らして光熱費を節約しながら快適な暮らしにしたいなぁ…。家は寒いものだ/暑いものだという常識を疑いました…! 次回ラボで、断熱男先生から断熱についてもっと学びたいです^^

後編では、ご質問の続きや参加者のみなさまから頂いたイベントのご感想などをご紹介します!

後編はこちら

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