(出典:http://www.yunphoto.net)
アメリカのカリフォルニア州のにある都市サンフランシスコは、世界でもっともエコな都市のひとつとして知られています。2003年に、「2020年までに埋め立てごみを無くし、生ごみはすべて堆肥化 することで土に返し、他のごみは全てリサイクルしよう」という「ゼロ・ウェイスト」目標を設定し、その計画を進めてきました。2021年になった今、その目標はどうなったのかご紹介したいと思います。
サンフランシスコってどんな街?
(出典:https://www.travel-zentech.jp/world/map/usa/sanfrancisco.htm)
サンフランシスコは西海岸を代表する大都市の一つです。人口は87.5万人(2019年時点)。1年を通じて穏やかな気候ですが「霧の街」とも言われ、7・8月は街が霧に覆われ肌寒さを感じる程です。近くにはFacebookやGoogleがあるシリコンバレーとよばれるエリアがあり、サンフランシスコにもTwitterやAirbnbなど多くのテック企業が立ち並び、テクノロジー都市としても有名です。また、環境問題にも敏感な都市として世界的に知られています。
ゼロ・ウェイストとは?
まずゼロウェイストとは、どんな意味かというと、無駄・ごみ・浪費 をなくすという意味です。出てきた廃棄物をどう処理するかではなく、そもそもごみを生み出さないようにしようという考え方です。
(出典:ゼロ・ウェイストアカデミー https://zwa.jp/)
サンフランシスコの家庭ごみの分別収集
(出典:Recology https://sfenvironment.org/recycling-composting-faqs)
サンフランシスコでは、家庭のごみは基本的に 3 つ の色別のごみ箱によって分別しています。
緑:「COMPOST(堆肥)」:生ゴミ、紙ナプキン、紙コップ
黒:「Trash/Landfil(埋立て)」:オムツ、プラスチック商品、ペン、COMPOSTとRECYCLE以外
青:「RECYCLE(リサイクル)」:ビン、缶、ペットボトル、段ボール
ごみは毎週決 まった曜日に、収集運搬している Recology社により回収されます。料金は、戸建て住宅で、各色 32 ガロン(約 121ℓ) のごみ箱を利用した場合、月に約 35ドルかかります。黒のごみ箱「Trash/Landfil(埋立て)」を 20 ガロン(約 76 ℓ)にすれば 25ド ルに抑えられというインセンティブがあるので、人々はゴミはできるだけ「COMPOST(堆肥)」や「RECYCLE(リサイクル)」をするようになり、「埋立て」用のゴミを減らすようにできています。
サンフランシスコ市では年間90万トンの廃棄物が出ています。ごみ焼却炉がないので、従来は埋め立てに頼っていました。今回の「ゼロ・ウェイスト」目標達成に欠かせない重要なパートナーが、 先ほども出てきた家庭系・事業系のごみを独占的に収集運搬しているRecology社(「recycle 」と「ecology 」という言葉からきている)です。市とRecology社は長年にわたり共生関係を発展させてきており、市は監督、政策展開、啓発、技術や改善方策の調査を行っています。一方Recology社はごみ、リサイクル可能物、堆肥化可能物を収集するインフラを整備・運用しています。
(出典:サンフランシスコにおけるゼロウェイストへの挑戦 山谷 修作)
サンフランシスコ市は「ゼロ・ウェイスト」目標達成に向けて、これまで様々な取り組みを行ってきました。
2006 – 発泡スチロール・ポリエチレンフォームの使用禁止
2007 – 建設廃棄物のリサイクルを要求
2009 – ドラッグストア、スーパーマーケットでのビニール袋の禁止。住民と企業に対しゴミを3種類のごみ箱に適切に分類することを義務付ける法律を可決(違反した場合$100罰金)
2014 – 21オンス(621ml)以下の水のペットボトルの販売を禁止
2016-小売店での使い捨てビニール袋配布を全面的に禁止
(出典:https://blog.btrax.com/jp/iot-zerowastesf/)
(https://sustainablejapan.jp/2018/09/27/california-plastic-straw-ban/34644)
そして、2012年には、ごみの80%をリサイクルや堆肥化、リユースできるようになりました。当時の全米平均は34%しかない中、80%という割合は都市のなかで最高でした。
(出典:https://www.wired.com/story/san-franciscos-dream-of-zero-waste-lands-in-the-dumpster/
動画:サンフランシスコはどのようにしてゼロウェストを目指すのか
しかし、2018年9月に開催されたグローバル気候行動サミット(GCAS)の「持続可能なコミュニティ」政策プラットフォームのなかで、サンフランシスコのロンドン・ブリード市長は、2020年までに「ごみゼロ」を実現できないことを認めました。
そして新しく、2030年を期限とする対策を発表しました。
・2030年までに1人当たりのごみの発生を15%削減
・2030年までに埋め立てと焼却への処分を50%削減
今回、目標達成できなかった原因として、リサイクルできなかったごみが問題としてあげられています。1980年代以降中国は、世界各国からプラスチックのごみの多くや古紙等の資源ごみを輸入し再利用していました。しかし、異物の混入や汚れもひどく資源化が難しいため、2018年に資源ごみの輸入を禁止しました。
そのため、資源ごみの輸出量が世界一の米国では、回収した資源ごみの行き場を失い、多くの自治体が資源ごみの回収停止や縮小、埋め立てを余儀なくされている状況です。サンフランシスコ環境局は、プラスチックのリサイクルが難しいことを考慮して、「削減/再利用」という新しいスローガンを採用しました。
環境局の広報担当者であるPeterGalottaは、埋め立て地に送られるプラスチックの量を減らすためには、プラスチック容器に入ったアイテムの購入をしないことが重要だと述べています。 2019年には、市内の小売・外食店舗でのプラスチック製ストロー使用を原則禁止する市条例を施工。そして、2019年8月20日からサンフランシスコ国際空港では容量が1リットル以下のペットボトル入りの水販売を禁止することを発表しました。
(出典:https://rief-jp.org/ct12/92480)
2003年から段階を踏みながら、掲げた目標に向かってきたサンフランシスコ。2020年までに「ゼロ・ウェイスト」の目標を達成することは出来ませんでしたが、期間を延長し更なる対策を発表しています。世界的にみても先進的なチャレンジをし続けるサンフランシスコの取り組みに、これからも注目していきたいと思います。
ごみ問題からみるSDGs
「SDGs」は、2015年9月に国連総会で採択された「持続可能な開発目標」の略称です。今回の該当ゴールは以下の通りです。
目標12: つくる責任つかう責任
SDGsの知識もあり、意識して生活の中で具体的な行動をしている人(意識的実行層)は、6.5%。SDGsについて知ってはいるが取り組みが少ない層(知識先行層)は、9.5%。この2層を合わせてもSDGsを意識して生活の中で具体的な行動をしている人は、まだ16%くらいだと言われています。
(出典:https://dentsu-ho.com/articles/6615)
街にあふれている安いプラスチック製品や、買い物の時にもらうレジ袋。本当に、必要なものですか?プラスチックでないとだめなものでしょうか?購入する前に、もらう前に少し考えてみてください。プラスチック製のストローを紙製に代えたり、マイボトルを持ち歩いたり、レジ袋を断ること等、毎日の選択の積み重ねで社会は変わります。その先の未来のことにに少し目を向け、一緒に行動していきませんか?
【出典リンク】
https://sfenvironment.org/zero-waste-legislation#waste-prevention
https://www.centreforpublicimpact.org/case-study/zero-waste-san-francisco
https://blog.btrax.com/jp/iot-zerowastesf/
https://www.wired.com/story/san-franciscos-dream-of-zero-waste-lands-in-the-dumpster/
https://archive.epa.gov/epawaste/nonhaz/municipal/web/html/
http://gomikan21.com/npo/sun6/no106%20zero.pdf
https://www.cnbc.com/2018/07/13/how-san-francisco-became-a-global-leader-in-waste-management.html
https://sfplanning.org/project/san-francisco-climate-action-plan
https://www.gef.or.jp/globalnet201607/globalnet201607-6/
https://www.centreforpublicimpact.org/case-study/zero-waste-san-francisco
https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/billTextClient.xhtml?bill_id=201720180AB1884
https://sustainablejapan.jp/2018/09/27/california-plastic-straw-ban/34644
https://edition.cnn.com/2019/08/02/business/plastic-water-bottle-ban-sfo-trnd/index.html
https://dentsu-ho.com/articles/6615