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教育の未来を東北から 〜東北SDGs未来都市サミット in 岩手町〜

「今生まれた子たちが育つ約20年後、東北地域の教育はどうなっているのだろうか」

町政施行70周年を迎える岩手町がホストとなり、東北地域でSDGs未来都市に認定された16の自治体(※)が集結しました。「教育」と「人材育成」をテーマに、3名の特別ゲストを招き、これからの教育について深く議論。参加者は、今後も引き続き教育の未来について共に考え続けることを盛り込んだ共同宣言を発表し、サミットは閉会となりました。

共同宣言

本記事では、約150名が来場したサミットの内容や東北地域および岩手町がこれから目指したい教育のあり方について特集します。

秋田県大仙市、仙北市、青森県弘前市、岩手県一関市、岩手町、陸前高田市、宮城県石巻市、大崎市、仙台市、東松島市、山形県飯豊町、鶴岡市、長井市、米沢市、福島県郡山市、福島市(2025年新たに岩手県遠野市が選定されています)

 

少子化・若者の流出が進む東北の厳しい現状

日本の出生数は昨年、70万人を下回りました。

特に東北地域は、全国のピークと比較して約15年早い1995年頃から人口が減少に転じており、少子化の課題先進地域です。

現に、過去30年間で東北地域の県立高校は102校も減少しています。

このように、物理的な校舎の存続がますます難しくなっています。先日も岩手県の高校再編計画の当初案(※)で、今後10年間で現在59校ある県立高校を44〜48校程度まで減らす方針が示されました。

県立高等学校教育の在り方~長期ビジョン~(R7策定)(2025年5月21日)https://www.pref.iwate.jp/kyouikubunka/kyouiku/gakkou/1006415/1082163/1082204.html

 

地域の教育の質を維持・向上させていくには

一般的に、地域から高校がなくなると、それに伴ってその家族である生産年齢人口の層が一気に転出してしまい、過疎化が加速してしまうと言われています。そのため、各自治体は入学者の獲得を目指し、「高校魅力化」に力を入れています。

各校が独自の工夫で魅力的になっていくことは素晴らしいことではありますが、一方で、絶対数の少ない高校生を各自治体で取り合ってしまっているという構造的な課題を抱えています。

このような状況の中で、地域の教育の質を維持・向上させていくにはどうしたらよいのでしょうか。

このままでは教育の存続そのものが危ぶまれる──その危機感を共有し、未来を考えていくために今回のサミットが開かれました。

パネルディスカッション「人口減少地域が目指す人材育成教育と可能性」

原体験に触れることが重要

そこで、サミットではまず、教育の今をとらえるために、尾木ママこと教育評論家の尾木直樹氏をお招きし、「教育現場の今 〜子ども新時代の教育〜」と題してサミットでご講演いただきました。こども家庭庁も提唱するこどもまんなか社会の実現に向けて、こどもの声を聞くことの重要性や、原体験が地頭を鍛えていくといったお話がありました。

会場が笑いに包まれる和やかな雰囲気

少子化ということは、子ども一人一人の声を聞きやすい環境にあると捉えることもできます。そして自然資源が豊富な地方は子どもに原体験の機会を提供するフィールドとして適しています。実際に、岩手町でも里川キャンプや田んぼアートといった取り組みをはじめ、さまざまな原体験の機会が用意されています。

毎年人気の里川キャンプ

田んぼアートのデザインは毎年地元の小学生が担当 [写真提供:STUDIO PEOPLE 老松弘行氏]

N高グループ・ZEN大学が近年注目を集めるワケ

教育の未来を考えていくために、日本一の生徒数3万3千人をほこるN高グループと、2025年4月から開講したN高グループの大学版とも言われるZEN大学の理事長を務められている山中伸一氏をお招きし、「人口減少社会と変化の時代にあるべき教育とは 〜N高グループ・ZEN大学構想を紐解く〜」をテーマにご講演いただきました。

文部科学事務次官を務めた経験があり、日本の教育に精通

N高グループ・ZEN大学は基本的に通学せずオンラインで授業を受けることができます。学習の進め方については伴走支援があり安心です。授業はオンラインの強みを活かし、その分野のプロをお招きして質の高い教育を提供しています。学校行事や部活、サークルも充実していて、オンラインで友達ができるのかな…という不安が払拭されるような機会がたくさんあります。ZEN大学は年間授業料が38万円と、他の大学に比べて安いことも特徴の一つです。

また、N高グループは地域で320ほどの体験プログラムを展開し、参加生徒は約1万2千人にのぼります。2022年には国際的にも「世界のイノベーティブな学校」ベスト3を受賞しています。

地域での豊富な体験プログラム

不利を逆手に取る[分散×オンライン型]教育プラットフォームの可能性

これまでは物理的な校舎に生徒が通学するという教育の仕組みが主流でした。しかし、わたしたちがこれまで経験したことのない人口減少社会においては、この仕組み自体を見直す転換点にあるのかもしれません。

文部科学省の学校基本調査(2025年)によると、通信制高校の生徒数は約30.5万人。全国で約10人に1人の高校生が通信制高校に通っています。この通信制高校の躍進に、教育の未来へのヒントがあるのではないか、山中理事長からのお話しから、そのような視点をいただくことができました。

普段は通信制高校でオンライン学習を進め、スクーリングや体験型教育のフィールドとして東北を訪れ、滞在しながら学ぶ。そのような未来をイメージすれば、東北の豊かな自然や環境は、むしろ実践的な教育コンテンツを提供できる先進地になる可能性を秘めています。

そして、そのような教育環境の提供は、子どもたちが自らの学ぶ意思さえあれば、居住地に関係なく学習機会を得ることを可能にします。近くに通う学校が無くても、全国の同じ環境で学んでいる同期たちとつながって共に学ぶことができますし、部活や同好会などにも参加できます。そして、子どもを持つ親も子どもの教育のために都市部に移住する必要性も低くなります。

「東北地域であの時学べたからこそ今がある」
将来、そのように話し、全国や世界で活躍する人材を育成するために、東北地域の教育の質を上げて誇りを持って人材を輩出できる地域にしていきたい。もし自分の子どもが「東北で学びたい」と言った時に、「行っておいで」と安心して言える教育環境を築くため、岩手町は今回の共同宣言をベースに、東北のSDGs未来都市をはじめとする方々と共に引き続き教育について考え、具体的な取り組みを検討していきます。

◾️広報いわてまち2025年9月「岩手町70周年記念シンポジウム 東北SDGs未来都市サミット in 岩手町
https://town.iwate.iwate.jp/town/0823sdg%EF%BD%93_summit/

◾️尾木ママオフィシャルサイト
https://ogimama.jp/

◾️子どもたちと探究する、川と暮らしのつながり(きこえるいわて)
https://iwatetown-sdgs.jp/article/deepen/kawa_to_kurashi/

◾️岩手町 田んぼアートサイト
https://town.iwate.iwate.jp/tanbo-art/

◾️N高等学校・S高等学校・R高等学校 ホームページ
https://nnn.ed.jp/

◾️ZEN大学 ホームページ
https://zen.ac.jp/

ご相談・お問い合わせ

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岩手町のSDGs未来都市の取り組みに関するお問い合わせは、以下よりお願いいたします。
地域間連携、町内外の事業者の方からのご相談などもお待ちしております。
※ご用件名に「きこえるいわて」と記入ください。

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