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私たちはどんな未来をつくりたい?未来予測とSDGs

「幸せな暮らし」「豊かな暮らし」ってどんなもの? みなさんは改めて言葉にしてみたことはありますか?

時間やお金に余裕があって、友人や家族に囲まれていて、好きな活動や好きな仕事ができている… それは人それぞれにあると思いますが、みなさんの「豊かな暮らし」を紐解いていくと、この豊かさがさまざまなものや人で支えられていることがわかります。

しかし、行き過ぎた経済が、日本や世界で起きている多くの問題につながっていることがわかってきたことから、今実現されているこの「豊かさ」は見直さないといけないときが来ています。まさしく現状の「持続不可能な世界」から「持続可能な世界」へと変革するために「SDGs(Sustainable Development Goals)」が出てきました。

ビジョンに関する記事でも、理想の社会ビジョンに向けて今をデザインしていく「バックキャスティング」の手法によって、SDGsを実現していくことに触れましたが、これをするにあたって、今後の人口予測や必要資源、地球の状態など、どのような予測が立っているかが知りたいところ。

そこで今回は、現在人類はどんな課題を抱えているのか、世界ではどんな未来予測が立っているのか、そこに対してどんな対策が打たれているかをまとめてご紹介していきたいと思います!

お寿司が食べられなくなる? わたしたちに立ちはだかる未来

出典/環境省

 

世界は今後どのようになっていくの? 研究からさまざまな予測が立っていますが、それを知るにも「SDGs(Sustainable Development Goals)」が役立ちます。

 

なかでも注目されているのが、ゴール13「気候危機」。「気候変動」から「気候危機」という名称に変わっているのをお気づきでしょうか?多くの研究者たちがさらに悪化する可能性を警告していることから「危機」と名称が変わったのです。

 

ある企業が「最後のお寿司の予約をとるキャンペーン」を打ち出して話題となりましたが、この気候危機によって環境が大きく変われば、食生活をはじめとしたわたしたちの暮らしも大きく変わる可能性があります。

 

たとえば、すでに起きていますが、気温が上昇することで世界で熱中症などの健康被害が続出したり、水の枯渇や食物が不足したり、さまざまな問題が警告されています。

日本は、食料自給率が「38%(カロリーベース)」と、60%以上を海外に頼っているため、世界の食料が減ってしまえば、コロナ時に起きたように輸入がストップし、国内の食料を取り合う事態が起きてしまうかもしれません(出典/農水省, 2019)。

出典/農水省

 

気候危機に大きな施策を講じなければ、今世紀末に世界の平均気温は、産業革命前と比べて「約3度」上昇する予測となっています(出典/UNEP,2020)。あまりピンと来る人が少ないかもしれませんが、ある研究結果では「1度」上昇するだけで、災害は「2倍以上」にもなると報告しています(出典/毎日新聞・国土交通省資料)。

 

この気温上昇を抑えるために、世界で約束されたのが「パリ協定」です。現状は「1.2度」上昇しているので、これをまだ安全だとされる「1.5度」の上昇に抑えるというために、世界各国が取り組んでいます。つい最近世界では、この気候危機の大きな原因となっている温室効果ガスの削減目標を出したところになっています。

 

出典/各国の二酸化炭素排出量比較 Think  ESG

 

この「1.5度目標」が実現できるまでに人類に残された時間は「あと数年」だと言う説もささやかれ、この危機を共有するために、パリやニューヨーク、ベルリンなどの都市で「Climate Clock」と呼ばれる時計がかかり始めています。

 

ここ日本でも、2020年に国会で「気候非常事態宣言」が決議され、岩手県はじめ自治体が宣言するところも続々と増えていたり、政府や自治体から2050年に二酸化炭素の排出量をゼロにすることを目指す「カーボンニュートラル宣言」が出されていたりします。

出典/環境省

 

さらにゴール15にある「生物多様性」に関しては、地球上にある陸地の75%、海洋の66%が人間活動によって大幅に改変され、100万種の動植物が絶滅危機に瀕していると報告されています(出典/IPBES,2019)。このままいけば、陸上の生物多様性は、2050 年までにさらに 10%減少する予測も立っており(出典/OECD,2012)専門家のなかには、気候危機同様ここ10年が重要だと話す人もいます。

 

 

そもそも生物多様性は、わたしたちにどんな関係があるでしょう? 

 

さまざまな生物の関係性によって生態系システムができており、そのなかにはもちろんわたしたちも入っていて、わたしたちの暮らしがこのシステムによって支えられている、この関係性が生物多様性であるということに以前の記事でも触れました。

 

たとえば、植物を育てるときに力を貸してくれている、ミツバチなどの虫が減ってしまうとなれば、作物が育ちにくくなる(ゴール2)、わたしたちの食における品目数が少なくなる(ゴール3)、それにまつわる仕事が減る(ゴール8)、人工的な食料が増えて文化が変わってくる(ゴール11)、ということになるかもしれません。

 

また、よく買う野菜の数が決まっているという人もいるかもしれませんが、あまりにそういう人が増えて、育てられる品目数がどんどん少なくなってしまったり、種が利益のためだけに使われたり、独占されたりなどして野菜が買いにくくなる状況が起こることで、食品の多様性が失われてしまうと、

 

気温上昇や災害などで作物が病気になってしまう、不作の年が出るなどしたときに、食べられるものが少なくなる、わたしたちが栄養をきちんと得づらくなるといったリスクも高くなってしまいます。

出典/画像, WWFジャパンウェブサイト

 

一方、海ではどんなことが起きているでしょう?

 

ゴール14にある「海の豊かさ」では、このままいけば2050年には、プラスチックの総量が魚の総量を超えるという予測が立っています(出典/WEF)。さらに、先程の気温が「2度」上昇することによって、サンゴ礁の99%が絶滅するかもしれないことも予測されています(IPCC特別報告書,2018)。

 

このままでは、もしかしたら魚やサンゴがいない、ゴミが浮いているだけの海になってしまうかもしれません。それによって漁師さんや観光業の人は、仕事を変えることになり、地域の産業や文化が大きく打撃を受けてしまいます。

 

さらに、プラスチックゴミの問題では、魚の内臓から多数のプラスチックゴミが見つかっており、その影響はまだはっきりしたものが出ていませんが、これを食べているわたしたちの健康にも、今後影響する可能性があることを研究者は警告しています(出典/東京農工大  高田教授)。

出典/東京農工大  高田教授資料

 

 

「持続可能な経済」に関する記事でも触れましたが、これらの環境破壊は、まさしく行き過ぎた「経済活動」や、それを支える「わたしたちの消費」によって引き起こされています。

 

コロナの影響で経済が止まり、環境問題が一部改善されたニュースをみた人もいるのではないでしょうか?   石炭火力発電所などが止まることで、中国の大気汚染が改善されたり、観光客が減ったことでベネチアの水質汚染が改善されたりと、コロナで【社会】が混乱をきたし【経済】が止まり【環境】に影響が出たわけです。

 

まさしくSDGsで調和が目指されている【環境】【社会】【経済】の相互関係がここに見て取れます。わたしたちは、社会を守るための経済を最適化していかなければ、環境問題の解決も、社会の豊かさも実現できない、ということが言えるのではないでしょうか。

 

 

わたしたちの暮らしや経済が、世界の問題を悪化させている?!

出典/画像 , WWFジャパンウェブサイト

 

ここまで触れてきた環境問題に対して、わたしたちはどのように関係しているのか、より詳しく見ていきましょう。

 

日本の暮らしが、どれくらい負荷が大きいものかを見るには「エコロジカルフットプリント」が役立ちます。この「エコロジカルフットプリント」によれば、わたしたち日本人と同じ暮らしを世界中の78億人がすることで、地球資源は「2.9個分」も必要だと試算されています(出典/GFN)。

 

この指標は、学校教育や企業戦略、まちづくりにも導入されており、わたしたちの暮らしの負荷を理解し、それを事業活動や地域の持続可能性の向上に役立てることに使われています。

出典/画像 , WWFジャパンウェブサイト

 

これには自治体別ランキングもあり、岩手県は全国で29位となっています(出典/WWF)。また、わたしたち日本は、自分たちの暮らしを支える資源を国内で賄えているのは「13%」しかないという試算もあります(出典/WWF)。他国に頼りすぎている日本は、今後どのようになっていけばいいでしょうか?

 

SDGsでは、世界全員の幸せや豊かさの実現を目指していますが、日本は人口が減少すると言えど、すでにたくさんの資源を使いすぎているので、まず自分たちの暮らしや経済を見直す・最適化していくことをしなければ、さらなる資源不足やその先の環境破壊を引き起こすことにもなりかねません。

 

 

増え続ける人口に、地球は耐えられるのか?

出典/Our World in Data

 

日本では今後、人口が減少することが予測されていますが、世界の人口は2050年に100億人近くなることが言われています(出典/IHME)。さて、これによってどんなことが起きるでしょうか?

 

特に、今後の発展が期待されているアフリカは、2050年に今の2倍、20億人以上になる予測がされています(出典/国連経済社会局)が、このまま人口が増えれば、ますます資源が利用され、枯渇する可能性や、温室効果ガスや廃棄物量が増える可能性があります

 

そこで日本をはじめとした先進国は、過去の排出量も含めて二酸化炭素排出量の削減と、資源の利用方法を改めて見直し、それをもとにしてわたしたちの暮らしのあり方を変えていき、さらに経済を最適化していかなければいけないということになるわけです。

典/WRI  WEF

 

 

人類がこれまで達成したこととポジティブな未来予測

出典/国連広報センター,2015

 

 

ここまでは、ネガティブな予測と現状を取り上げてきましたが、ポジティブな予測ももちろん存在します。

 

これまで人類は、SDGsの前身となる目標「MDGs(Millenium Development Goals)」を実行することによって、極度の貧困に苦しむ人たちが10億人以上減らすことができたり、開発地域における小学校の純就学率を、2000年の83%から2015年には91%まで増加させたり、

 

HIVへの感染者数を2000年から2013年の間に、約350万人から210万人へ減少させたりと、コロナで後退したとの報告もありつつ、途上国の問題を大きく改善しています。

 

ですので、SDGsに取り組むことで人類が抱える問題がポジティブに改善されていくことは十分に期待出来るわけです。10年前と今とでは、インターネットや携帯電話の普及で格段に世界が変わったように、今後のテクノロジーの発展でイノベーションが起きる可能性もあります。

 

経済面では、テクノロジーによって生産性が向上し、世界経済は2050年までに2倍以上の規模になるとの予測もあります(出典/Pwc)。これによって雇用が創出されれば、貧困問題は一部解決に向かうことが期待できます。

 

とはいえ、前述に示した自然破壊の現状と予測があるので、世界では、環境を回復していくことと経済復興を両立させていく「グリーンリカバリー」を推進する国が増えていますので、バランスが必要です。

 

このようにネガティブなデータとポジティブなデータ、両方を見ながら、SDGsなどの指標も使いながら、うまく社会や経済をデザインしていくことがわたしたちに求められています。

 

 

目の前の問題に振り回されることなく「ファクト」と「予測」で取り組む必要

以前「ファクトフルネス」という本が話題となりましたが、ただ目の前にある課題ばかりに気を取られ過ぎると、いつの間にか地球の問題が悪化してしまう、国際社会においていかれる、調和が崩れるということにもなりかねません。

 

だからこそ人類の現状を知るファクト(事実)や未来予測を踏まえた上で、政策や経済を展開していく必要があるのです。計画だけでなく実行段階においても、必ず科学的なデータを活用しながら取り組むことは欠かせません。

 

日本でも、EBPM(Evidence based policy making)という政策に科学データや調査結果などのエビデンス(証拠情報)を活用することが広まりつつあります。コロナの教訓として、世界でも語られているとおりステークホルダーに科学者や有識者を入れることは「マスト(必須)」となってきています。

 

地域の大学や国際機関、研究機関などの協力を得ながらも、地球と国と地域の問題解決に  “同時に” “確実に”  取り組んでいきましょう!

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