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彫刻家が語る彫刻の効能――「心象風景と向き合う」ということ

取材先:
浮島彫刻スタジオ
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私たちは環境と彫刻の関係性を通して、なにが美しく、なにが自分自身にとって魅力的なのかを改めて意識することができる

数々の彫刻作品を四季の変化と楽しむことができる「石神の丘美術館」、世界中からアーティストを呼び彫刻作品を生み出してきた「岩手町国際石彫シンポジウム」——。岩手町は、これまで彫刻と町民が深く関係しあってきた町でもあります。町の中に風景として溶け込む彫刻の数々や、その彫刻を生み出してきたアーティストと町民の関係性。本記事では、岩手町と彫刻の歴史を振り返りつつ、そこで活動する片桐宏典さんとケイト・トムソンさんに焦点をあて、彫刻を通して見えてくる町の可能性について考えていきます。

彫刻とともに生きる町

岩手町には、世界中のアーティストが制作した彫刻が点在しています。その情景はまるで、彫刻とともに生きる町。力強くそびえ立つ木々の前に整然と並べられたり、車道の小さな脇道の端にひっそりと置かれたりと、そこかしこに置かれた彫刻作品たちは岩手町の生活や風景に静かに溶け込み、そこにはアートが息づく美しい町の暮らしがあります。

岩手町にこれほどの彫刻作品が集まった背景には、「岩手町国際石彫シンポジウム」の歴史があります。岩手町国際石彫シンポジウムは、1973年から2003年まで全30回に渡り開催され、毎年5人程度のアーティストを世界中から招聘し、約1ヶ月半の滞在期間を岩手町で過ごすなかで作品を制作、町内に設置するというプログラムでした。今、岩手町に設置されている彫刻作品は約113点を超えています。

アーティスト滞在型の岩手町国際石彫シンポジウムの成果は、町に還元された彫刻作品だけでなく、そこで生まれたアーティストと町民のコミュニケーションにもあると言われています。現在でも、過去の招聘アーティストと交流が続いている町民がいたり、アーティスト自ら懐かしんで岩手町に再訪することもあります。単に彫刻作品を生み出すのではなく、アーティスト・町民・岩手町の新しい関係を「彫刻」し続けたことが大きな功績の一つなのです。

環境と向き合い風景をつくる、浮島彫刻スタジオ

その岩手町国際石彫シンポジウムに副実行委員長としても携わり、岩手町で今も活動する彫刻家が片桐宏典さんとケイト・トムソンさんです。1991年、岩手町浮島地区に「浮島彫刻スタジオ」を設立した片桐さんとトムソンさんは、岩手町での拠点生活について「ゼロから自分たちで風景をつくっていける場所を探していたときに、北岩手の風景が思い浮かんで。岩手の姫神山は良い石が採れる場所で、その御影石をよく彫刻作品に使用していたこともプラスでした」と語っています。

片桐宏典〈軌跡〉2022

「抗う波の軌跡 浮島彫刻スタジオの30年」にて展示された作品。ケイト・トムソン〈アフロディーテ〉2022

もともとスコットランドを中心にヨーロッパで活動していた2人は、岩手町にも拠点を設立。緑に囲まれた20,000㎡の広大な敷地にアトリエや作業場が点在する浮島彫刻スタジオで、数々の彫刻やパブリック・アート、環境アートを生み出してきました。石神の丘美術館でも、2022年9月10日から10月30日までの50日間にかけて、2人の30年に及ぶ活動を振り返った展示「抗う波の軌跡 浮島彫刻スタジオの30年」が開催されました。

社会に静かな問いを響かせる彫刻

左・片桐宏典さん、右・ケイト・トムソンさん(写真提供:STUDIO PEOPLE)

「いつの間にか町の暮らしにオブジェが溶け込んで、まるで低温火傷のように、精神的な過程の変化がじんわりと生まれるような、そんな彫刻を目指しています。」

そう語るのは、国内外や岩手町にも多くの彫刻作品を生み出してきた片桐さん。一方、トムソンさんは、「私の作品は、彫刻を通して人と人が繋がっていけるような舞台装置。アートは社会的な意識に関係していて、私たちは環境と彫刻の関係性を通して、なにが美しく、なにが自分自身にとって魅力的なのかを改めて意識することができる。」と語ります。

アートは多くの人に影響を与えるという意味で「公共的」なものですが、「公共」とは町に生きる1人1人の集合体です。個人の集合としての公共空間と、1対1で対峙できるのがアート表現であるとも言えるでしょう。

町に置かれた彫刻は、鑑賞者に「どういう世界で生きたいのか」を静かに問いかけているように、岩手町の日常に溶け込んだ彫刻作品は、アートと個人の対話を体現しているようにも感じられます。彫刻とともに生きる岩手町で、アートが私たちの日常とどのように関わり合っているのか、ぜひ体感してみてください。

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