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【デンマーク発】市民共創型でプロジェクトを実行する取り組み

気候変動や環境破壊など、世界が一つになって解決しなければならない課題が深刻化している中、世界の自治体ではどのような取り組みが実施されているのでしょうか。

今回は、デンマークにあるオーゼンセ市で気候や環境に関するプロジェクトに取り組む、市職員のTorben(トーベン)氏にお話を伺いました。

オーゼンセ市での気候・環境部門設立の背景

オーゼンセ市は、北欧神話の最高神であるオーディン(デンマーク語でオデンOden)から名付けられ、1988年には1000年祭が行われるなど、デンマーク最古の都市の一つです。

人口は約20万人、首都コペンハーゲンのあるシェラン島の隣にあるフユン島の中心にあり、コペンハーゲンからは西に約170kmほどの距離にあります。また、緯度55度に位置するため夏は快適ですが冬は非常に厳しい寒さの地域です。

日本では、童話のアンデルセンの出身地として知っている方も多いかもしれません。北欧ならではの落ち着いた美しい街並みは観光地としても人気の町です。

そのようなオーデンセ市ですが、気候や環境に対し焦点を当てて取り組まなければならないという認識から、2022年1月にオーゼンセ市議会にて「気候・環境部門」を新設することが決定、現在約100名の職員が在籍しています。

目標達成のための様々なプロジェクト

「気候・環境部門」では、2030年までにカーボンニュートラル達成を目標に掲げ、様々なプロジェクトが推進されています。

■植林プロジェクト

CO2を吸収する森林を増やすとともに、昆虫が増えるなど生物多様性を確保することを目的としたプロジェクトです。

植林活動は市民と共に行われており、1種類の木を植えるのではなく、さまざまな植物/木を植えることで多様な昆虫の住処を作り上げることを意識しています。

また、このプロジェクトは地上だけでなく海中でも実施されています。

川から汚染物質が流れ、汚れていく海を少しでも改善することが目的で、ダイバーと連携して行っています。

市民やダイバーなど市の職員だけでなく市民や関係するステークホルダーを巻き込み、連携しながら進めており、SDGsの目標として15の「森の豊かさを守る」だけでなく14の「海の豊かさを守る」にもコミットしており、広範囲に影響を与えようとしていることが印象的なプロジェクトとなっています。

 

■ゴミ再利用プロジェクト

モノの生産からゴミになる過程を考え、ゴミになる直前に段階に近いものを優先的に再利用できないかを検討していくといういわゆる3Rを推進していくプロジェクトです。

3Rは日本でも取り組みが進んでいるのでご存じの方も多いと思いますが、 Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の3つのRの総称のことです。

例えば、スマートフォンの場合、リデュースはそもそものゴミの量を減らすことなので当てはまりませんが、使わなくなったら他人に譲ったり売ったりすることを考える(リユース)、その次に部品を分解して売ったり、引き取ってもらうことを考える(リユース・リサイクル)という形で、最終的に残ったものだけがゴミになります。

ゴミになる前のものを活用できる方法を段階的に考え、最終的にゴミとなってしまうかを判断していきます。

他にも、着ることができなくなった服を使える部分を再利用、バックに生まれ変わらせるなどの取り組みも実施していて、日本では服のリサイクルはまだまだ少ないものの、北欧やヨーロッパでは服のリサイクルは当たり前となっており、商店街などには多くの服のリサイクルショップがあります。

円滑なプロジェクトの進め方とは

2022年に設立された新しい部門でありながら、100人を超える職員が在籍し、様々なプロジェクトを実行しているというのは驚きでした。

そこで、

  1. 誰がプロジェクトを作っているのか?
  2. どのように合意形成をするのか?
  3. プロジェクトの作り方のプロセス?

など様々な質問をしてみました。

■プロジェクトを実行するまで…

最初に議会で予算を通すのは日本と変わりません。しかしその後が違っていました。

予算が決まった後は市職員がプロジェクトを考案することになります。日本では、この段階で仕様書を作って企業やNPOなどに業務委託をしていくような流れが多いですが、オーデンセ市では市職員が考案したプロジェクトについて、市民から意見を集めるという形で進められていきます。

■市民から意見を集めるとは具体的にどのように行っているのでしょうか?

ランダムに集められた市民約100人とディスカッションを実施、市職員から市民全体へのインプットをした後、

我々はこういうプロジェクトを考えました、このアイデアについてどう思いますか?」と問いかけをします。

ここで、

「我々は市民のみなさんの意見は聞きますが、それが必ずしも採用されるわけではありません」と明確に伝える

ことが重要であるとトーベン氏は言います。

また、ディスカッションは少数のグループに分けた市民同士で行われ市職員は発言しません。

数回のディスカッションを得てまとまった意見(プロジェクトに対してのポジティブな意見やネガティブな意見)は議会で市長と政治家に直接伝えます。

その結果プロジェクトが実施されるかどうか決まることになります。

市職員と市民とのコミュニケーションの場があること、そこに何百人の人が集まること、そこで集まった意見が議会まで届くこと。これら一連の流れがサイクルとなっている点は、SDGsが同じようなプロセスで進められたように、とても大切な意思決定プロセスであることにあらためて気づかされました。

SDGsの取り組みは利害関係がぶつかるというトレードオフの関係を考えねばならず、何がその時に最善かを様々なステークホルダーと共に考え、実施していかなければなりません。その意味でこれらのプロセスはそれを具現化するプロセスを踏んでいました。

日本における市民と行政の関係はデンマークとは違う点も多く、これらの取り組みをすぐに日本で実施することは難しいかもしれません。しかし、行政だけで課題を解決することが難しいことを考えれば、岩手町でもどうすれば町民のみなさんと行政とが一体となって課題解決のために共に考えていけるか、その仕組みを考えていく必要がありそうです。

最後に

岩手町では「美しい100年の森プロジェクト」を実施しています。森を守りながら林業も振興していくことは、今後、岩手町にとって非常に大切な取り組みであり、大きな財産になる可能性のある領域の一つでもあります。

このようなプロジェクトも行政主導で進めるのではなく、町民も積極的に参加して意見を交わしながら進めていくことが求められています。

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