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「働く」ってどういうこと? まちで学ぶ未来の歩き方

取材先:
岩手県立沼宮内高等学校

この経験が、将来進路を考える時の支えや安心・自信につながることを願って

岩手町役場や、町内外の人から愛される「道の駅 石神の丘」からほど近くにある岩手町唯一の高校、岩手県立沼宮内高等学校(以下、沼宮内高校)。2021年より、進学や就職を控えながら学問に励むここ沼宮内高校の生徒たちが、2年次で「企業活動体験」に取り組むプログラムがスタートしました。

「エネルギッシュでパワーあふれる高校生のときに経験することは、きっと何かの時に役立ったり思い出になるはず。このプログラムも、そんなピースの一つになったらうれしい」と町の担当者も話す、「働くこと」の体験プログラムを紹介します。

新しい働き方が増えるいま、次世代は未来をどう描く?

2020年、岩手町は「SDGs未来都市」に選出され、高等学校教育にビジネスを学ぶ機会を導入できないか? という議論がスタートしました。そんななかコロナ禍を迎え、リモートワークが一般化し世界中で働き方が新たな様式に変化していきました。

ここ数年だけでもワークスタイルはどんどん変化し、次世代を担う高校生たちが大人になる頃には、きっとさまざまな働き方、仕事のつくり方、生き方があるでしょう。そんな未来を生きる高校生たちが、「働く」ことの経験値を身につけるひとつの機会になるように、と岩手町から沼宮内高校に体験プログラムの提案が行われたのです。

岩手県立沼宮内高等学校

SDGsの数あるトピックのなかに「質の高い教育」「働きがい」といったテーマがあります。岩手町では、沼宮内高校での企業体験プログラムのほかにも、「いわぷろ」(身の回りの課題や関心をテーマにプロジェクトを立ち上げ、実行を通して学ぶ探究型学習プログラム)を実施しています。(2022年度のみ)

「いわプロ」は、より個人の問題意識に主軸を置き、地域の人や近隣の大学生などと解決策を考えながらその課題を探究していく、というもの。意思ある「個」を中核に広がる活動であることに対して、沼宮内高校の「企業活動体験プログラム」は、「企業」を仮定して取り組むため、「チーム」として課題(ニーズ)を解決していくための手立てを試行錯誤しながら学ぶ場です。

いま岩手町では、こうした2つの異なるタイプの教育プログラムを進行しています。

プランだけでは終わらない、実践までのプログラム

2021年にスタートした当プログラムは、実は当初のテーマは「起業体験」。ニーズを見出しサービスを考え、最終的にプランを発表するという内容でした。

2021年に実施した際に発表されたのは、道の駅で発売する岩手町の食材を使った新商品の開発や、イベント企画、SNSを活用したプロモーション企画など、それぞれ試行錯誤を経た、工夫にあふれたビジネスプランでした。この最終発表会では、岩手町町長をはじめ各界のプロフェッショナルがコメンテーターとして参加し、生徒たちの発表に対してフィードバック。発表後も学びのつづくプログラムとなりました。

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しかし、「働く」という経験なしに起業というお題に向き合うのは少し壁が高いという気づきから、2022年からは「働く」ということ自体に焦点を当て、「企業活動」を体験するプログラムとして再始動しました。

約半年という期間のなかで、沼宮内高校の2年生が6つのチームに分かれ、町が推進するプロジェクトをもとに事業計画を立て、関連企業でのインターンを通して計画をブラッシュアップ(精査)します。成果物は、プラン発表だけにとどまらず、実際に製品を販売したり、サービスの体験会を開催するといった「実践活動」となりました。

具体的には、以下のように進行しました。

「企業活動体験プログラム」の主な流れ

  1. オリエンテーション
  2. チーム活動の心得
  3. プロジェクト紹介
  4. チーム編成[チームビルディング]
  5. 事業検討・プレゼン[事業計画・施策立案]
  6. インターン活動[体験]
  7. 実践の準備[施策ブラッシュアップ]
  8. 実践・振り返り

地元企業とのリアルなコラボレーション

チーム分けのもとになったプロジェクトは、いずれも町の取り組みや地元企業の事業に関連しています。既存のプロジェクトや事業に対して、高校生ならではの目線で課題を発見したり、その課題を解決する企画やサービスのアイデアを考えたり。グループワークで施策を考えたうえで企業インターンの体験をすることで、実地で得た学びを施策に反映し精査するということを繰り返す経験や、お客さんを相手に実際に金銭を取り扱う体験は、参加生徒にはなかなか刺激的だったようです。

IBC岩手放送での企業体験の様子

2022年度 実践プロジェクト一覧

  • [1]地産品の販売促進
    • インターン先:岩手缶詰株式会社、株式会社岩手町ふるさと振興公社(道の駅 石神の丘)
    • 連携機関:株式会社岩手町ふるさと振興公社(道の駅 石神の丘)
    • [2]移動式屋台の活用促進
      • インターン先:株式会社菅文(ホームセンターかんぶん 岩手町店)、株式会社ベルジョイス(ジョイス沼宮内店)、有限会社外山商店
      • 連携機関:キャベツマンマルシェ、家具工房T Factory
      • [3]レンタサイクル活用促進
        • インターン先:瀨川モータース有限会社、セヨシサイクル
        • 連携機関:シナネンモビリティPLUS株式会社、セヨシサイクル
        • [4]廃プラスチック再資源化、油化
          • インターン先:有限会社久保良商店、株式会社宮崎商店(岩手町サービスステーション)
          • 連携機関:丸紅株式会社、株式会社宮崎商店(岩手町サービスステーション)、株式会社グローバルアライアンスパートナー
          • [5]地域ラジオ局開発・運営
            • インターン先:株式会社IBC岩手放送
            • 連携機関:株式会社IBC岩手放送、株式会社クレバーラクーン、有限会社システムナレッジ
            • [6]高齢者向けスマホ教室
              • インターン先、連携機関:中央公民館

              意志ある進路に進むために、まちができること

              プログラムのクライマックスは、生徒が考えブラッシュアップを重ねた施策の実践を、沼宮内高校の文化祭と同日に開催される「産業まつり」で行うこと。

              移動式屋台を活用して町の特産品のブルーベリースムージーを販売したり、町のグルメマップを制作・配布しながら町の事業であるレンタサイクルのPRをしたり、各プロジェクトが約半年間練った施策を実地で展開しました。

              • 岩手町で新たに始まった電動レンタサイクルのPRを行う生徒

              • スマートフォン講座を実践している生徒たち

              • 生徒たちのアイデアが形になった、バイオマスプラスチック製カトラリー「coo×dish」

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              沼宮内高校の卒業生の進路の約半分は就職だそう。高校生のうちに、「働くこと」はおもしろいと肌身に感じる経験をしたり、おもしろく働くにはどうするといいのか? と考える機会をもつことはきっと将来に活きるはず。そしてその成長を町全体で支えたいという想いが、岩手町や地元の事業者にはあるとプログラムの担当者は話します。

              当プログラムには、既述のようなさまざまな事業者が関わっています。近い将来、就職した卒業生が当時のつながりでまた仕事をご一緒したり、直接仕事につながらなくても近所付き合いが続いたり、「人と人のつながり」が生まれたら、それもまたこのプログラムの結晶の一つなのかもしれません。

              卒業を控える高校生の誰もが考える将来の進路。もちろん卒業時に決めた進路がすべてではなく、折々で働き方、生き方に向き合うことはあるでしょう。
              しかし、高校生の時に、仲間と支え合いながら課題に取り組み、地域の大人と対等に議論を重ね実地に繰り出した経験が、「自分の意志をもつこと」「その意志が大切にされること」「責任をもって自分の道を歩むこと」という安心と自信につながり、どんな道にも歩を進められる人になることを町や地域は願っています。

               

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              地域間連携、町内外の事業者の方からのご相談などもお待ちしております。
              ※ご用件名に「きこえるいわて」と記入ください。

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