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21世紀型の自治体間連携で実現を目指す、循環型のまちづくり

岩手町ではリビングラボの一環として、SDGs未来都市に選定された都市と姉妹都市として連携する試みを検討しています。この連携は、都市間でお互いの取り組みを活かし合うことで、持続可能なまちづくりを実現することを目指しています。岩手町では、町の強みである農業・スポーツ・アートを軸に、より国際的な都市として発展するために国内外の都市との連携に向けた取り組みがはじまっています。

内閣府は、2020年に第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定しました。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、人口急減・超高齢化という日本が抱える問題に対して、各地域の特色を活かすことで持続可能な社会を目指す様々な政策的取り組みが実施されています。

岩手町でも、都市部から地方への環境的・経済的・エネルギー的な流入や循環を促すため、石巻市・さいたま市・豊島区との連携を現在計画しています(2022年12月現在)。本記事では、各都市との連携の背景を振り返りながら、姉妹都市間の連携が描く未来について考えを巡らせます。

さいたま市と、循環させるエネルギー

岩手町とさまざまな「エネルギーの循環」を生み出すための連携先の候補に、さいたま市があります。その連携には2つの背景があります。一つは、さいたま市が主催している「東日本連携・創生フォーラム」での経済的な繋がりです。東日本連携・創生フォーラムでは、東日本の各都市が連携することによって、地方創生や地域が活性化することを目指した経済交流などが掲げられ、岩手町とさいたま市のネットワーク強化が現在進められています。

さいたま市の清水市長(左)と対談する岩手町の佐々木町長(右)

二つ目は、「エネルギー」の視点です。さいたま市は、「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ(ゼロカーボンシティ)」の実現に向けて取り組んでおり、「脱炭素先行地域」にも選定されています。都市部のさいたま市と自然資源が豊かな岩手町の連携によって、地域循環共生型のエネルギーの需要供給関係が築ける可能性などを模索しています。

 

日本は、新幹線や電車などの交通インフラが全国的に整備され、水回りなども高い衛生基準を保っています。そうした社会基盤が整った国のなかで、遠方の自治体同士が連携することはまだ世界的にも珍しく、さいたま市と岩手町の循環関係は国際的にも連携都市の理想のモデルとなるかもしれません。

北上川を通して繋がる石巻市

宮城県北東部に位置する石巻市とは、北上川を介した地理的な関係から連携の試みがはじまりました。岩手町には、北上川の源泉といわれる「弓弭(ゆはず)の泉」があり、その水が流路延長249 kmの旅をし、石巻市の河口に流れ込んでいます。こうした繋がりを起点として、2つの町が今後どう治水の取り組みから川の水環境を保全し、経済発展を創出するのかといった議論がはじまっています。

2022年12月20日に実施された「未来の北上川流域を考える自治体連携会議」では、水辺が描く都市デザインや、北上川の生態系を守っていく流域ネットワークの議論が展開されました。川を通して繋がっている市や町同士が、川の生物多様性や持続可能性を考慮しつつも、川の保護・発展に寄与する経済活動をいかに生み出していくのかが議論されています。

「開業20周年記念感謝祭」での石巻ブースの様子

現在、具体的な経済活動として、道の駅との連携がスタート。石巻の海の幸と岩手町から採れた山の幸を合わせた地産品の販売など、北上川の水資源から生み出された地域の連携活動が、今後活性化していく予定です。北上川が、私たちにとってだけでなくあらゆる生物にとって川がよりよい状態になるように取り組みながら、その活動自体を持続可能にするために経済的価値も生み出すことが期待されています。

アートカルチャー都市・豊島区と育む町での暮らし

豊島区は消滅可能性都市を脱却し、持続発展する都市として「誰もが主役になれる」まちを目指す「国際アート・カルチャー都市」構想を掲げまちづくりを進めてきました。これはSDGsの理念や将来像と、まさに考えを一つにするもので、これらの取組みが評価されSDGs未来都市に選定されています。アートと文化(カルチャー)の観点から未来都市に選定されている都市は、全国に3都市のみ。

彫刻に囲まれ、アートを町の三大要素として掲げる岩手町もその3都市のうちのひとつです。そうした「アートと文化」からまちづくりを推進していくという共通項を持った自治体として、豊島区と岩手町の交流がはじまりました。

これまでも、202210月〜11月に5回に渡りSDGsツアーを開催。岩手町の魅力を豊島区に伝え、現地の民間企業との関係構築が行われてきました。現在は、企業からの会場提供といった連携をしており、今後より具体的な経済施策に取り組んでいく予定です。

2022年10-11月、豊島区立としまみどりの防災公園(愛称:イケ・サンパーク)」にて開催された「岩手町×豊島区 SDGs Tour」の様子

持続可能なまちづくりのためには、発展しつづける技術だけではなく、日常への感性を潤すアートの重要性にも注目が集まっています。町と町が連携することで、防災時に協力し合うといった具体的な助け合いをはじめ、より精神的・社会的に良好な町の未来を一緒につくっていくこと——それがアート・カルチャーを通して未来都市・豊島区との連携目的です。

自治体間連携が導く循環型のまちづくり

さいたま市・石巻市・豊島区——それぞれ異なる理由で、自治体間連携を目指した取り組みが進んでいる背景と現状を振り返りました。現在、自治体間連携の候補は国内のみならず、農業大国フランスの西海岸地域サン=ポル=ド=レオンとも議論が進んでいます。都市間のネットワークによって、お互いに支え合い、これからの21世紀をリードする循環型のまちづくりが実現することを期待しています。

ご相談・お問い合わせ

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